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カラオケ店内に入り受付を済ませると、指定された番号の部屋に入る。
煙草臭い室内。床が何となくベタベタし、薄汚れた壁紙の端が剥がれかけている。
奥に誘導され、L字型のソファに鞄を置いた──時だった。
「パンツ脱いでる所、見せて」
唐突に言われた指示に、驚いて振り返る。と、出口を塞ぐようにして立つ男の顔が歪み、厭らしい目付きで僕を射抜く。
「それ含めての、一万だからね」
「──!」
……そん、な……
血の気がサッと引き、グラグラする脳内。
浅くなる呼吸。
揺れる視界の中に映った壁掛けの内線電話は、男のすぐ横──
「……」
大丈夫……
脱いで渡せば、それでお終い。
自分に言い聞かせるように何度も心の中で唱えながら、迫り上がる嫌悪感を飲み下し、震える手でズボンのベルトに手を掛ける。
その間中、張り付くような男の視線を感じ──視姦されている気分だった。
「……あ、あの」
思うより先に、口が開く。
顔ばかりが熱くなり、声や身体が酷く震えているのが解った。
「やっぱり……僕……」
やっとの思いで言葉を繫ぎ、外しかけたベルトを元に戻そうとする。
と──
「何いってんの、今更」
ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……
醜い贅肉を揺らし、荒い息を吐き出す男がゆっくりと近付く。
捕食者の如く吊り上がる目尻。
僕の心をも凍り付かせる双眸。
──トン、
肩を軽く押され、仰向けに倒れる身体。
のし掛かる膨れた醜体。押し潰されそうになるのを必死に堪え、身を捩って抵抗する。その度に押し付けられる、男の硬くなったソレ。汗ばんだ丸い手が僕の制服を割り開き、秘めていた柔肌を空気に晒す。
「……や、」
「だったら何で、ここまでついてきたんだ。金が欲しいからだろ?」
「……」
そう言われてしまえば、もう何も言い返せない。僅かに残っていた筈の抵抗する気力さえ、簡単に奪われてしまう。
「……」
太くて短いナメクジのような指が、僕の胸元を舐るように撫で回す。
肌に掛かる荒い吐息。汚されていく身体。
指先で小さな突起を弾きながらベルトの緩んだズボンをパンツごと下ろすと、脂ぎった男の顔が貪るように僕の首筋に埋められた。
「約束の金だ」
顔や腹にぶちまけられた、男の白い欲望。特有の臭いを放つその液上に放られる、一枚の紙幣。
「……」
ドクドクと、下肢の間から溢れる白濁液。
……世界が、滲む。
薄汚れていた天井が、真っ白にぼやけて見える。
シャンデリアの如く、眩しい程に光を放って。
これで、一万円──
好きな人に無理矢理されるのと、気持ち悪い人に金で買われるのと……何が違うんだろう。
「……」
カチャッと、ドアの閉まる音がする。
満足した男が出て行ったんだろう。
再び訪れる、静寂した室内。
溢れていた涙が、瞬きもせず伝い落ちた。
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