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芽生え1
「お前、男なら誰でもいいんだろ…?」
校庭の端の方にある、普段あまり使われていない野球部の部室。
汗臭さと熱気が籠もったそこに連れ込まれた僕は、三人の上級生に跪く形で上から押さえつけられていた。
「……早く脱げよ」
床に両手を付き、男達のニヤけ顔を睨み上げる。
いずれも見た目は優等生。規則通りの容姿。
言うことを聞かないせいで、痺れを切らしたんだろう。主犯格──真ん中で仁王立ちをしている男が「やれ」と両隣にいる二人に、顎で指示を出す。
一人は、僕の両腕を背中に回し肘を固定。もう一人は、僕のカッターシャツに手を掛け、左右に割ってボタンを乱暴に弾き飛ばした。
その間に主犯の男は、ガチャガチャと自身のベルトを外しにかかっていた。
「……しゃぶれよ」
髪を乱暴に鷲掴みされ、乱暴に引き上げられる。
男の青黒く、反り返った怒張。
……そこに、顔を強く押し当てられた。
* * *
桜の花びらが全て落ち、枝に柔らかな若葉が目立ち始める。
気候は一気に気怠い空気へと変わり、ぼんやりとした生徒が目立つ。
「…工藤」
授業が終わると同時に、担任に呼ばれた。
面長の顔に細縁眼鏡。色白の肌。
神経質そうに見えるその担任は、一重でいつも目付きが悪い。
「ちょっと来い」
威圧した瞳を向けた担任の後を追って教室を出れば、向かった先は進路相談室だった。
「…君はあまり授業に出ていないようだね。
義務教育期間は、どんなバカでも進級できるが……これは酷いな」
あからさまに眉間に皺を寄せると、眼鏡の奥にある目が鋭く僕を見据えた。
「君のお兄さんはとても優秀だったそうだが。
……その血が君にはないのか?」
担任は、その冷たい目で僕を拒絶した。
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