149 / 153
42-2
■ハートマーク注意■
ヴィランオーラを全開にし、有無を言わさない目力で同級生の女子を遠ざけたアルファ男子は、ただただ呆然としているベータ男子を荒々しく連行した。
旧校舎の片隅にある写真部専用の誰もいない暗室へ。
「ん!!??」
セーフライトの赤い光に満たされた狭い密室で樫井は凌空にキスした。
勢いのままに捻じ込まれた舌先。
無防備だった唇を突破されて口内をこれでもかと攻め嬲られた。
男とキスするのは初めて、アルファとするのも初めて。
突然の傍若無人な振舞にショックを受け、怯え、竦み上がる凌空かと思いきや……。
「ん、ン、ン……っ……ンン……♥」
めちゃくちゃ感じてしまった。
脳天まで蕩かすような激しい濃厚キスに腰ガク状態、髪をグシャグシャに引っ掻き回す乱暴な愛撫まで追加されて、暖房の効いた生温い室内で逆上せそうになった。
(か、樫井のキス、すごぃぃ……)
引っ切り無しに立つリップ音。
窮屈な口の中で激しいながらも細やかに動く舌尖。
忙しげに何度も角度を変えては好き勝手に貪られる。
歴代彼女ともこんな獣み溢れるキスはしたことがない。
口内に潜む性感帯を為す術もなく暴かれて凌空は呻吟した。
「ンぅぅ……っ……んむっ……んっ……ぅ♥」
どうしても洩れる声は妙に上擦っていて、甘えているようで、我ながら猛烈に恥ずかしくなった。
(こんな声、一度だって出したことなぃぃ)
「……か……樫井ぃぃ……♥」
五分以上経過して、やっと解放された唇。
上も下もびしょびしょに濡れそぼって微かに震えていた。
「な……なんで……こんなこと……」
怪しげな赤い光の中で見る樫井の顔はいつにもまして精悍で、ヴィラン風にかっこよくて、正直なところ凌空は甘いゾクゾクが止まらなかった。
「そ、それにさ、寒くて待ってるくらいなら……樫井から来てくれたらよかったじゃん……」
「何様だ、幸村」
凌空は飛び上がりそうになる。
すぐ背後に迫る雑然とした作業台と樫井に挟み込まれていたワンコ男子は、慈悲なき膝頭で股間をグリグリされて、即座に涙目と化した。
「や、やだ……」
「キスだけで勃起するなんて、このスケべ犬」
「ッ……スケべ犬って言うなぁ~……樫井だってスケべじゃんかぁ、いきなりベロチューなんかしてきて……ッ……ちょ……さ……さわんなぁ……おさわり禁止ぃ……」
「犬のくせに。ご主人様に撫でてほしくないのか」
「だ、だから……俺、犬じゃなぃぃ……ッ……あ、ぅ……だめ……そんな強いの、だめ……ッ」
股間に差し込まれた手で半勃ちしたペニスを制服越しに擦り立てられた。
ヤラシイ愛撫に応えて凌空の熱源はさらに硬くなる。
揉み立てるようにねっとり触れられると、腰がビクリと跳ね、樫井の手に自ら押しつける羽目に。
「自分から擦りつけてくるなんて、この淫乱ベータ」
「ぅぅぅッ……ひどい……もう帰る……」
「帰ってみろ、路上でこんな破廉恥な股間曝してたら通報される」
「ッ……トイレでヌくから……お願いだから俺から離れて、樫井……」
凌空は遠慮がちに樫井の肩に手をあてがい、押し返そうとした。
「なんで来なかった」
満遍なく涙の張った凌空の目がパチパチ瞬きした。
「覗き見で事足りたか。でも、その覗き見も段々しなくなって俺の教室に来なくなったな」
「っ、え……あれ……?」
自分のベルトをカチャカチャと外され、ホックとファスナーを蔑ろにされて、凌空はより一層慌てる。
「ま、待ってよ、樫井……」
「幸村の分際で俺を待たせるとか、生意気にも程がある」
「だからっ……そんな言うなら、自分から来ればっ……ふひぃ……」
ボクサーパンツ越しにペニスを握られて凌空は情けない声を上げた。
布一枚分減って、厚い手をよりダイレクトに感じて、さらに勃ってしまう。
「犬なら犬らしく、主人を待たせないで駆け寄ってくるのが正解だろ」
とうとう露骨に盛り上がったボクサーパンツの内側にまでやってきた利き手。
すんなり発情した熱源を直に撫でられ、握られ、擦られて、凌空はぐっと項垂れた。
「あ、だめだってば……チンコ、そんなしちゃ……」
「俺の手で呆気なく射精するのか?」
「し、しちゃう……樫井ぃ……樫井は……俺に来てほしかったの? もしかして俺のこと待ってた……?」
「……」
「クラス、別々になって……樫井もさみしかった……?」
下着の中でズリズリしごかれて口をへの字に曲げ、骨組みがしっかりした肢体をブルブルさせながらも。
顔を伏せていた凌空は上目遣いにおっかなびっくり樫井を見つめた。
「だったら、ごめん……待たせてごめんね、樫井……」
ふにゃりと笑いかけられた樫井は。
半開きだった隙だらけの唇を自分の唇で再び塞いだ。
微熱のこもる口内を尖らせた舌先で掻き回しつつ、利き手を動かす。
膨脹する先っぽから根元にかけて何回も掌を行き来させた。
余念のないキスと愛撫に凌空は瞬く間に上り詰めさせられる。
目の前の樫井に思わずしがみつき、なだらかな肩に頬擦りした。
「い、いっちゃぅ……」
「いっていい」
「で、でも……制服汚れる……」
「じゃあ、これならいいだろ」
体の向きをぐるりと変えられた凌空は咄嗟に作業台に両手を突いた。
後ろから抱きしめられるような格好で、迷いなく股間に伸びてきた大きな手でペニスをしこたまシコられて、両目をヒン剥かせた。
「いっ……いくっ……いくっ……♥」
校舎の片隅、閉ざされた暗室で。
樫井の手で思いっきり達した。
「は……っ……はぁ……ぅぅ……学校で射精しちゃった……ぅぅぅ……」
「……幸村、こっち向け」
「やだっ」
「生意気言うな。いったくせに。犬のくせに」
「やだ~~……っ……んぶっ……んむむ……っ」
作業台に伏せしようとする凌空の顔を強引に背後へ向けさせ、樫井は滴るほどに不埒なキスをした。
「んっ、っ、っ、ぶ……♥」
「……幸村、今からウチに来い」
「ふぇ……っ? だって、俺、今から友達とごはんーー……っ……っ……♥」
下唇を甘噛みされ、緩々と啄まれて、ムズ痒い微弱な刺激に凌空は堪らなさそうに喉を鳴らした。
「俺とツガイになれ」
うろ覚えの言葉を聞かされて、絶頂の余韻と甲斐甲斐しいキスに恍惚となりながらもキョトンとする。
「ツガイ……? それって……アルファとオメガの契約ってやつじゃ……」
「俺にオメガはいらない」
これまでか弱げでミステリアスで中性的なオメガに一度も靡いたことがないアルファは。
人懐っこいワンコ男子なるベータの凌空をストレートに強請る。
「俺はお前がいい、幸村」
ともだちにシェアしよう!