4 / 7
第4話
昨日の疲れもあったか、ぐっすりと眠っていたようだ。
「あ……、良く寝た」
あくびをし、身体を伸ばす。隣を見れば、結城の姿はなく布団が畳まれて置かれていた。
「あいつ、何処へ行ったんだ」
帰ってくれればありがたい事だが、廊下に出ると庭の方から声がする。
サンダルを履き出ていくと、畑で野菜を取る父と結城の姿がある。
「おはよう、二人とも」
「おはよう。お父さんが収穫をさせてくれるというのでな。楽しいな」
麦わら帽子に手拭いを首にかけ、真っ赤なトマトを掲げながら笑顔を向ける。取り繕う事のない、その無邪気な表情は見た事がない。
「結城君は良い青年だ。お前と違って」
父に言われて苦笑いを浮かべる。外面が良いだけだと言い返してやりたい。
「言ってろ」
「井戸の水でトマトときゅうりを冷やしている。母さんの所に持って行ってくれ」
「はいよ」
縁側に置かれたざるを手に冷えた野菜をのせて台所へと向かう。
母はコンロの前で何かを作っているようだ。覗き込むと湯の中にトウモロコシが入っていた。
「あ、トウモロコシ」
「もぎたて。結城君に食べさせてあげるのよ」
やたらと楽しそうで、自分の息子よりも結城かよと少し嫉んでしまう。
ざるにあげたトウモロコシから白い湯気が立ち上る。
「二人を呼んで頂戴。朝食にしましょう」
朝食の準備は既に終わっていたらしく、皿に盛ったおかずを渡される。
居間に向かうと、丁度、二人が戻ってきた。
「朝飯っ」
と言うと二人は庭から直接中へあがりこんだ。
「はい、ご飯とお味噌汁。これは結城君がもぎってくれたトウモロコシよ」
皿に山盛りのトウモロコシが真中に置かれる。
食事を済ませてトウモロコシにかじりつく。
「甘くてしゃきしゃきとして美味い」
「そうだろう。俺も食べよう」
と、トウモロコシに手を伸ばした所に、
「じぃじ、ばぁば、颯太、来たぞっ」
元気よく声を掛けて庭から甥の武 が家へと上がり込んだ。小学校四年生で、生意気盛りで元気のよい子だ。
「おう、いらっしゃい」
颯太の隣に知らない人を見つけ、興味津々と覗き込む。
「誰?」
「こら、武」
失礼だろうと額を指で小突く。
「俺は颯太君の友達の真人だ」
「そっか。よろしくな、真人」
「呼び捨てじゃなくて、さん付けしろ」
「わー、トウモロコシ」
話しは聞かないし自分勝手。誰に似たんだと頭を抱える。
そんな武を結城は特に怒ることなくトウモロコシをかじっている。
ともだちにシェアしよう!