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第6話

 家に帰り、暫くは話しをしていたが、いつのまにか寝てしまっていたようだ。  横を見ればすぐ近くに整った容姿があり、目覚めのそれは心臓に悪い。 「良く寝ていたな」  結城も起きたばかりなのだろう、寝跡が頬についている。それでも笑顔が爽やかだ。 「二人とも起きたのね。スイカを切ってくるわ」  と母が台所へと立ち、家族がテーブルを囲む。  赤と黄色のスイカは井戸水で冷やしてあり、のどが渇いていたのでそれで潤す。 「あれを一度やってみたかったな」  と呟く結城に、何かと聞けばスイカ割がしたかったそうだ。 「やったことがないのか」 「あぁ。子供の頃から海外で過ごす事が多かったから」 「お前、ボンボンだものな」  そう嫌味っぽく口にする。 「まぁな。一度、花火がしたいと願ったら、打ち上げ花火だったし」  流石、金持ち。一般人とはスケールが違うよなといじければ、結城が寂しそうに笑いかける。 「すまんな、実家まで無理やりついて来てしまって。これを食べたらおいとまをするよ」  昨日の夜、帰れと言ったのは颯太だ。だが、結城は断ると言った。それなのにそんな事を言うのだろう。 「……急にどうしたんだよ」 「俺は、お前が誘いを断ってまで何処に行くのか気になった。そして断られた理由を知った」  ここは良い場所だと、嫌がられてもついて来てよかったと口元を綻ばす。 「自分勝手な事で家族との時間を邪魔してしまい、申し訳なかった」  そう頭を下げる。理由を素直に話してくれた。確かに自分勝手だ。だけど、怒りはわいてこない。 「今更だろ。だからもういいよ。それよりも、花火をやらねぇで帰るの?」 「花火」  目を瞬かせて颯太を見ていた結城だが、見る見るうちに喜びの表情へと変わる。 「だから、明日、一緒に帰ろう」  と手の甲に触れる。 「俺はまだ、ここにいてよいというのだな?」 「あぁ、そういうことだ」 「そうか、嬉しいよ」  その微笑みの破壊力は半端ない。男である自分にまで効果があるなんて。  結城は見た目と人当たりの良さもあり、同期内では彼が中心であった。颯太もその頃は良く話をしたものだ。  だが、社長の息子だという噂が流れ、事実だという事を本人の口から聞くと、摺り寄る奴、距離を取る奴、彼女の座を狙う奴、周りの態度は急変するが、颯太は態度を変える事無く接していた。  研修が終わり、配属先が決まったあたりから結城の態度がおかしくなり始めた。  まず、名前をフルネームで呼ばれるようになった。  休みの日になるとやたらと誘われるようになった。  真っ赤なバラの花束をプレゼントされそうになった時は流石に引いた。それから結城は俺の中でただの同僚から苦手な男へとかわった。  友達になれると思っていたのに、裏切られたという気持ちもあった。  それからは結城の事を見ようとしなくなった。でも今はそれを反省している。彼は見た目と同じく、いい男なのかもしれない。

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