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第7話
夕食の後、花火を楽しみ、その後に小川に蛍を二人で見に来ていた。
「楽しかったな」
「あぁ。ネズミ花火の、あの時のお前……」
ネズミ花火が足元で回転し始めて、まさかそういうものだとは思っていなかったようで、結城が驚いて逃げまくっていた。
「そういうお前だって」
その慌て振りが面白くて笑っていたら、自分の方にも花火がきて、思わず声をあげてしまった。
「あはは、そうだよな」
あの時の自分にも笑える。
「あぁ。好きな人と一緒に楽しいことが出来て幸せだ」
「好き?」
「あぁ。ずっと恋していたんだ」
颯太の気を引きたかった。ただ、それだけだった。
「バラとか贈られた時は引いたぞ」
結城に気のある女性なら贈られて嬉しいと思うだろうが、流石にお祝いとかでなく花を贈られても純粋に喜べない。
「はじめてなんだ。自分から好きになったのは」
さりげなく自慢かよと思いつつも、それが颯太とか、どうなんだろう。
「残念な奴だな、お前って」
「残念? 俺はお前と出逢えたことに感謝しかない」
「うわぁ……」
恥ずかしい奴だ。
だが、そんなに想ってくれいるという事が嬉しく、同性に告白されたというのに嫌悪感がないのはそういう所かもしれない。
「想いを告げたからな、これからはもっと攻めていく。覚悟しておけよ」
「は、俺は簡単に落ちねぇし」
そう口角を上げれば、蛍が宙を舞った。
「綺麗だな……」
その美しさに魅了される。
「あぁ、綺麗だ」
ふと視界を遮られる。そして、唇に柔らかなモノが触れた。
「あっ」
キスされた、そう思った時には既に離れていた。
「宣戦布告だ、荻颯太」
耳元で囁かれ、ゾクッとしながら耳を押さえる。
「なっ、結城!」
「俺が一歩リードだな」
と笑う結城に、してやられた事が悔しくて、背中に軽くパンチを食らわした。
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