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第15話

「なに落ち込んでんの、葵」 「べつに、なんでもないよ」 溜息を吐きながら机に頬杖をついた。 陸は、自分の席(僕の前)に座って身を乗り出してくる。 「で?真相は?」 「うん、途中で会ったから一緒に来た」 「うわ…マジ話かよ。っていうか、そこまで仲良くなったんだ?」 「うん、そうかも」 陸が驚くのも無理はない。先週までは、お互いの間にかなり厚い壁があったのだから。 「もしかして、付き合う事にしたわけ?」 「は!?」 陸の突然の発言に、僕は教室内に響き渡るほどの声を上げてしまった。恥ずかしいったらない。 「ちょっと、陸。馬鹿な事言わないでくれるかな」 「いや、だって一緒に学校来るとか、そうとしか思えないじゃん」 「違います」 「ふぅ~ん」 なにその疑惑の眼差し。 ジロリと睨んだら、ちょうど担任が入ってきた。 これ幸いとばかりに慌てて前を向く陸。…まったく…。 みんなは、少しでも良いと思えば、それが恋愛感情かどうかなんて気にしないで付き合うものなのかな。 でも、それは僕自身が納得出来ないし、名波先輩にも失礼だと思う。 けれど、名波先輩の言葉に甘えて、いつまでも待たせるわけにもいかない。 本当にどうしよう…。 なんて考えていた僕は、いつの間にかSHRが終わっていた事さえも気が付かなかった。 結局、僕がずっと悩んだ所で考えは堂々巡り。 いくら時間が経っても、僕1人の中から生み出される答えのバリエーションが変わるわけじゃない。 だからといって、誰かに相談するなんて事は………、 「…あ…、そうだ」 名波先輩の事を相談するのに、うってつけの人がいる事を忘れていた。 あの人は僕と名波先輩が付き合う事を望んでいるけれど、相談自体には乗ってくれると思う。 名波先輩の親友である、松浦先輩なら。 一時間目の授業が始まる前に…と、携帯を取り出す。 金曜の夜、途中で先輩達と電話番号とアドレスを交換しておいてよかった。 【おはようございます、野々宮です。相談したい事があるのですが、先輩の時間がある時に会ってもらえませんか?】 ポチポチと文を打って、よし、送信。 迷惑だったらどうしよう…とも思ったけど、今の僕に躊躇している余裕はない。 返事来るかな。 ヴーヴーヴー ポケットにしまったばかりの携帯が、突然震動した。 一時間目の数学の先生が入ってきた時だったから、ちょっと焦った。 授業開始の挨拶をしてから、前に座る陸の体に隠れて携帯を取り出す。 誰だろう。 開いた画面を見てビックリ。松浦先輩からのメールだった。 【おはよー。ノノちゃんから相談を持ちかけられるなんて嬉しい~ヽ(´∀`*)ノ今日の放課後は耀平もいないし、それで良ければ空いてるよ~】 まさかの即レス。早いにも程がある。 先輩が即レスなのに、僕が待たせるわけにはいかない。 やっぱり陸の背中に隠れてコソコソと携帯を操作。 【ありがとうございます。では、今日の放課後、屋上で待ち合わせましょう。宜しくお願いします】 送信。 ヴーヴーヴー …………。 【了解v(^∇^*)】 早ッ! 思わず口に出してツッコミを入れそうになったけど、なんとか堪えた。 相談できるのは松浦先輩しかいない!とか思ったけど、大丈夫かな…。 ゆる~い感じの返事に、そんな微妙な不安が横切ったのは仕方がないと思う。

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