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第2話 淫靡な夜

 そう僕はあの時、いろいろ考えたのに――  安田課長と熱い夜を過ごすべく、何かやらかしてやろうと策を練ったのにも関わらず、実際は出向いた企業側の不正を明るみにしてしまった。 「ウチの会社の部長と、連携を組んでいたなんて……。非常に嘆かわしい話だ」  キャバクラの割引券やピンサロの割引券等を手渡して、接待の日のアリバイを見事に裏工作していたらしい。それが分かったから、向こうさんも大慌て――話が上層部にまで行くこととなって、大ごとになった関係で夜になってしまった。 「今夜は泊まりだが大丈夫か。下田?」 「はい。明日が休みでよかったですよね」  んもぅ、全力で大喜びしておりますが! 「全然よくないんだぞ、まったく。ホテルがとれないんだ。連休の中日だから、連泊してる客で埋め尽くされていてな」 「はあ……?」 「だからそこに泊まるぞ。その前に買い物して行こうか」  真顔で言って指を差した先は、ラブホテル街だった。  いっ、いきなりラブホって安田課長、アナタって人は、もしかして僕のこと―― 「何を戦慄いているんだ。お前みたいな坊ちゃん、ラブホなんて泊まったことがないんだろう?」 「へっ!? いやぁ、まあ……」 「やっぱりな。覚えておけ、出張先で泊まるところがなきゃ、こういうのもアリなんだから。寝泊りできればいいんだし」 「……寝泊りだけ、ですか?」  疑問に思っていたことを口にしてみる。結構ドキドキ。出張はペアで行ってるんだ。故に誰かとラブホに泊まっているワケで。   「男同士で泊まっているんだから、何かあるワケがないだろう」  眉根をぎゅっと寄せ、忌々しそうな表情を浮かべて、ひとりでコンビニに向かって歩いて行く寂しげな後姿。 「僕らの世界では男同士だからこそ、何かがあるんですけどねー……」  コソッとごちてから、その背中を走って追いかけた。  火のないところに煙を立てるべく、燃焼しそうなモノを次々と投入し、炎上させようと試みている作者が、結構必死になっているのを、安田課長はまだ知らなかった。

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