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第3話
かなかなかな・・・と窓の外から聞こえてくる蜩の鳴き声に、渉の動きがピタリと止まった。
「渉!?どうした?」
「子供の頃の事をふと思い出したんだ」
「そっか・・・」
「うん」
湊斗は、ゴロンと隣に寝そべって甘える仕草を見せるわが子を、いとおしそうにそっと抱き寄せた。
「パパと出会った時の事、不思議と憶えているんだよね。毎日、両親が喧嘩してて、俺、物陰に隠れて、耳を両手で塞いでブルブル震えていたんだ。見付かったら、父親に叩かれるの分かっていたから・・・。そんな時だよ、俺を助けてくれた人がいたんだ。隣に住んでいた当時、高校生だった・・・そう、パパだよ。血が繋がっていない赤の他人の俺を引き取ってくれて。育ててくれた。夏が終わる頃――蜩が鳴く今の時期だよね、パパの子になったの・・・」
「そうだな。渉とは出会ったときから、運命の赤い糸で結ばれていたのかもしれない・・・」
「パパ・・・好き・・・」
真摯に思いのたけをぶつけてくる息子に、湊斗の心は、振り子のように大きく揺れ動いた。
考えた末、辿り着いた答えは・・・。
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