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第2話
第一子の真湖 が男の子だったから、真湖は家族や親戚から邪魔者扱いされた。
真湖の父親も責められた。父親の怒りは真湖に向いていたらしい。味方はいなかったんだって。
せめて華宮 の名前に恥じないようにって、真湖は小さい時から頑張って。でも真湖の頑張りはから回っていた。
火に油。真湖はそう言って笑って、オレはそんな真湖の頭を撫でるしかできなかった。
真湖は悪くないのに、周りの大人は真湖を責めて。
だから頑張れば、その努力も否定される。「華宮の家に男はいらない」「女だったら良かったのに」って。
「それでもオレは耐えた。頑張ってどうにかなるものじゃないのに。1番を取っても、ため息をつかれるだけなのに」
真湖は自分が悪くないのに自分を責めて、耐えて、頑張って。
でも頑張れなくなったから、今夜死んでしまおうとカッターナイフを持ち出した。
その理由を、真湖は少ししか話さなかった。妹ができたって。親戚会議の声が聞こえてきたって。
「……生まれてからずっとさ、いらないって言われてて。妹ができて。ゴミみたいに捨てられるなら、自分で命を絶ってやろうって思ったんだ。些細な復讐なのかも」
「復讐なら真湖が死ぬこと、ないじゃないっすか……」
オレが口にしたのは、ひどい言葉だったと思う。
家族から「いらない」って言われたことのない、普通に幸せな子供のたわごと。
でも、真湖は、やっぱりオレに罵詈雑言をぶつけることをしなくて。ただ、ダークグリーンに寂しさを添えて、小さく微笑んだ。
「復讐だよ。華宮は息子の存在をなるべく隠していた。だからニュースに取り上げられて、知らしめてやる。……まあ、もみ消されるかもしれないけど。あとは、ごみを捨てる気安さで消されるより、ちゃんと人間として死んでやりたいな、って」
オレにはもう、真湖をとめる、ちゃちな言葉は思いつかなかった。
ちゃちな言葉じゃ、真湖をとめる資格もないって、そう思った。
オレは真湖ともう少し一緒に過ごしてみたいよ。もちろん、そんな言葉もオレは飲み込んで。
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