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第2話
だって、今、オレの前に広がる光景は、白色まみれの中で、ダークグリーンを隠してしまった真湖 だけ。
マスコミがインタビューにと主に狙う、華宮 の人間はここにいない。
真湖が病院に運ばれてからずっと、オレはお見舞いに来てるけど、オレ以外に真湖を見舞っている人を見たこともなければ、聞いたこともなかった。
真湖の家族が見舞いに来ていないという事実は、一瞬だけオレの目を潤ませた。オレの視界を赤色に染めた。
でもそれは本当に一瞬で、すぐにすっと熱が引いて、オレは冷静さを取り戻した。
誰も見舞いに来ていない。親戚も。祖父母も。両親も。あたりまえじゃないか。
だって彼等にとって、真湖はいらないんだから。
胸くそ悪いけど、彼等にとっての真湖は、本当ならこっそり“処分”できたのに、余計なトラブルを起こされた、厄介者なんだから。
そんな厄介者の所に毎日通うような人間は、そうそういない。
ただ、申し訳程度というか、きっと騒がれてしまった以上世間体を気にしたんだろう、有名な家柄にふさわしい特別個室を、昏睡状態の真湖にあてがった。
彼等が保護者として真湖にしたのは、それだけ。
マスコミはそんなことも知らないのか、それとも、「幼い時には育児放棄も!? 病室に親の姿は無し!」といった下世話な記事を書きたいのか、真湖の病室を突き止めようと必死になってる。
せめて、真湖がまだ自殺に思い切る前に、華宮の闇を暴こうと、その必死さを使ってほしかった。
オレとしては華宮がどんな目にあってもいいけど、そのせいで真湖が逆恨みされたり、世間の好奇心に晒されてしまうのは嫌だから。
だからオレは、真湖の友人なんですと必死で頼んで教えてもらった病室を、オレ以外の誰にも知られないようにって、病院で全力疾走してる。間違っても追いつかれないように、って。
そして真湖がどう思ってるかは分かんないけど。
真湖の幸せがどっちなのか分からないけど。
それでも「真湖が起きてますように」っていつも願いながら、扉を開けて、病室に入る。
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