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第1話 父に似た顔。
男の子は青や黒。
女の子は赤やピンク。
周りの子ども達が当たり前の様に与えられた男女のイメージカラーみたいなものに俺は違和感を感じていた。
幼少時分から、女の子が好む様な色合いの服ばかりを着せられていたので、それが普通だと思っていた。
母はいつも女の子に間違えられそうな可愛いデザインの服を俺に当てがった。
俺の母親は、綺麗な物。可愛い物が好きだ。
そして母が嫌いなのは俺が男の子らしい格好をする事。
自分の夫にそっくりな顔をした俺が嫌みたいだ。
だから俺は父に似ているこの顔が、自分が男である事が好きになれなかった。
父方の親族は、いくつもの会社を経営しており、父は祖父の事業を引き継いでいた。
金銭面に関しては事欠かない暮らしではあったが、父から注がれたものは愛情では無く金だけだった。
家には殆ど帰って来なかった。
大方愛人でも囲っているのだろう。
本当のところは知らない。
知りたくも無かった。
偶に家に帰って来ても、両親が会話をしている姿を目にする事は滅多に無かった。
父は時折、何か言いたげに俺をじっと見つめて来る。
俺が話し掛けようとすると、寂しそうな表情を浮かべ俺の頭をポンポンっと軽く叩くと、無言のまま家を出て行った。
なまじ外面が良い分、彼の素顔に気付く人は1人として居なかった。
有り体な話しと言ってしまえばそれまでだが、事実だから仕方がない。
俺はそんな父が嫌いだった。
父には弟がいる。
顔は父に似ているが、性格は似ていない。
明るくてとても優しい人だ。
叔父は父の代わりにいつも俺と母を気に掛けてくれた。
彼は俺にとって父親の様な存在だった。
そんな叔父が仕事の都合で海外に行ってしまい、母と俺は又2人きりになった。
中学1年の夏。
学校主催のサマーキャンプから帰宅すると、家の中がまるで泥棒が入ったかの様に荒らされていた。
その瞬間、俺の脳裏によぎったのは父の顔。
そして母の安否だった。。
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