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エピローグ

 明け方、斗貴央は紗葉良より先に目が覚めた。  腕の中では愛しい恋人が幸せそうに寝息を立てて静かに眠っていた。  その柔らかい髪を撫で、口付ける。  そして目を閉じ、あの日の悪夢を思い出す――――あの日、紗葉良が珍しく甘えて誘ってきたあの日……。  背中から抱きしめた紗葉良の首筋には自分にはつけた覚えのない赤い跡がくっきりと付いていた――。  本人が気付くことが出来ないような真後ろに、わざと自分に見せつけるために誰かが付けたのだと思った……。 ――そんなことをするのは、出来るのは、たった一人しかいない――。  アイツしか――龍弥しかいないと思った――。  だけど紗葉良は決して何も話さない――。    あれ以来メールも電話もすぐに普通に返ってくる。  だから多分あの一日、一回だけ――。  それでも俺の傍にいてくれるということは、紗葉良が俺を選んだということだ――。  本当はあの瞬間、頭に血が上るほどムカついたし――  妬きまくったし、悔しくて泣けたけど―― ――だけど  ……あんなに強く好きだったアイツを紗葉良は選ばなかった―― ――俺を本当の一番にしてくれた――――だから――  俺は全部を飲み込んだ――。  今が、目の前に紗葉良がいることが、一番大事なコトだと思ったから――――――紗葉良は約束してくれた。  もうどこにも行かないと、ずっとここにいると――。  俺はそれを、それだけを信じよう――――。  今日も一日、紗葉良と過ごす約束をした――。  起きるのはまだもう少し遅くてもいいだろう。    斗貴央は頭を紗葉良に寄り添わせてもう一度瞼を閉じた。  今度は自然と、穏やかで静かな気分になれた――――俺は今、  幸せだ――――。 ➖END➖

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