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第1話
兄さんが結婚して半年。
あの時、世界中が兄さんと大富豪のダンナの結婚に驚いた。
カブ価がぼーらくだの経済に影響がなんだのって大騒ぎで、就活にも影響出るかもみたいな話が出たほどで。
兄さんのことも、ワイドショーや週刊誌がかなりしつこく嗅ぎ回ってたみたい。そりゃあ大富豪の結婚で、しかも同性で日本人でってなったら、こんな美味しいネタないもんね。
でも、兄さんのことは、ダンナがちゃんと守ってくれてたみたい。
「やっと愛する人に巡り会えた。世間が俺たちのことをどう思おうが知ったことではない。彼を幸せにし続けることが、俺の生涯の仕事だと思っている」
結婚後沈黙貫いてたダンナが、会社の広報通してそんなことを発表してから、少しずつ沈静化していった。そのせいかどうだかわかんないけど、結果的に、ダンナの会社の収益は下がるどころかちょっと上がったらしい。まぁ俺にはわかんないし、どうでもいいんだけど。
兄さんと会うペースは相変わらずだし、会う場所もほとんどバーだし、ホントに結婚したの?って聞きたくなるくらい何も変わりない。
強いて言えば、慣れない生活してるせいか、ちょっとため息つくことが増えたかなぁ。
疲れてんだなっていうのがわかるね。
「ねー、人の顔見てため息つくのやめてくんない? 興醒めだわ~」
今日だってため息ついてるからね。
いつもの席で一気にビール半分くらい飲んで、カウンターにつっぷしてため息。
「しょーがねーだろー、他人と暮らすってマジでしんどいんだからな」
「でももう半年も経ってんじゃん、慣れなよ~」
「一人暮らし長かったから、なかなか慣れねぇんだよ」
とかなんとか言いながら、空港で見た指輪は絶対外さないし、こうやって愚痴言ってるみたいに見せて中身はいっつもノロケだし。結局上手くやってるみたいだから心配もしてない。
「仕事も前より全然忙しいし」
そういえば、結婚したのをキッカケに、ダンナの専属通訳になったって言ってたんだよな。
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