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第17話
涼しい顔して、店員にコーヒー注文してる。こいつも50円コーヒー狙いか。
そのままソファに体を沈めて、静かに文庫本を開いた。
(やべぇ、いい匂いする)
ふわっと香水の香りが漂ってくる。甘めだけど爽やかな匂い。柑橘系みたいな。コンビニにいたとき全然感じなかったのに。
匂いに誘われるまま、何も言わず、ソーサーごとコーヒーを持って、ガッツリ彼の前に席を移した。
「……は?」
ものっすごいびっくりした顔をしてる。そりゃそうか。
「よ」
うん。やっぱり色白でキレ長い目で黒い髪で、唇もツヤツヤしてる。改めて見ると、本当にキレーな顔してるわ。
「え、何、誰?」
コンビニにいた時よりは声出てるな。ちょっと声高めかも。高いって言うか、高校生みたいな幼い感じ?
「覚えてない?コンビニの客だよ」
そのまま目の前でニコーッて笑ってみる。向こうはものっすごい眉間に皺寄せてる。
「……覚えてねぇよ、誰だよ」
そりゃそうですよねぇ。じゃあこれを機に覚えといてもらうか。
「じゃあ覚えといて、教育学部の常連さんだから。よろしく」
そのまま手を伸ばして握手を求める。けど、俺の手は受け取ってもらえない。
ゆっくり引っ込めながら、あのさぁ、と続けて話しかける。
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