17 / 126

第17話

涼しい顔して、店員にコーヒー注文してる。こいつも50円コーヒー狙いか。 そのままソファに体を沈めて、静かに文庫本を開いた。 (やべぇ、いい匂いする) ふわっと香水の香りが漂ってくる。甘めだけど爽やかな匂い。柑橘系みたいな。コンビニにいたとき全然感じなかったのに。 匂いに誘われるまま、何も言わず、ソーサーごとコーヒーを持って、ガッツリ彼の前に席を移した。 「……は?」 ものっすごいびっくりした顔をしてる。そりゃそうか。 「よ」 うん。やっぱり色白でキレ長い目で黒い髪で、唇もツヤツヤしてる。改めて見ると、本当にキレーな顔してるわ。 「え、何、誰?」 コンビニにいた時よりは声出てるな。ちょっと声高めかも。高いって言うか、高校生みたいな幼い感じ? 「覚えてない?コンビニの客だよ」 そのまま目の前でニコーッて笑ってみる。向こうはものっすごい眉間に皺寄せてる。 「……覚えてねぇよ、誰だよ」 そりゃそうですよねぇ。じゃあこれを機に覚えといてもらうか。 「じゃあ覚えといて、教育学部の常連さんだから。よろしく」 そのまま手を伸ばして握手を求める。けど、俺の手は受け取ってもらえない。 ゆっくり引っ込めながら、あのさぁ、と続けて話しかける。

ともだちにシェアしよう!