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第16話
構内に2カ所お気に入りの場所があれば、充分楽しいしゆっくり出来る。と思ってる。
20人入ればいいくらいのカフェには先客がすでに5人。お気に入りの席は空いてる。
心置き無く腰掛けたところで、コーヒーお願いしますぅ、とここのポイントカードを出す。これでコーヒー1杯50円。
スマホで適当に芸能ゴシップを見ながら、出されたコーヒーに舌鼓を打った。
(へぇ、あのタレント引退すんのか)
なんてどうでもいいことに延々視力を費やす。
暇つぶしにはちょうどいい。何にも考えないで見てられるものは、自分のコンプレックスや気にしていることから目をそらすのに充分なツールだ。
それが何の解決にもならないことを、重々わかっていながら。
(ん?)
スマホの画面を指で撫で続けると、視界に誰かが入ってくるのを感じた。
普段なら気にならないのに、なぜかその時はやけに気になって、頭を上げて確認するほどだった。
俺のすぐ横のボックス席に腰掛ける。俺とは向かい合わせの場所に。
サラッとした長めの髪。
キレ長い目。
シュッとした横顔。
(……あ)
コンビニのあいつだ。
まるで隣に憧れのアイドルが来たみたいに、目をまんまるくしてしまった。
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