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第19話
「文学部」
「へー、文学部なんだ。何科?」
「なんでそこまで」
「いーじゃん気にしなくたって~。何科?」
「……書道学科」
「しょどう?」
そんなのあったのすら知らない。どんだけ大学に興味ないんだ俺。
とはいえ、他学部の奴と話すのなんかマジでレアだわ。
「え、なんでしょどうなの? しょどうってアレでしょ、習字でしょ?」
面白くてガンガン聞いちゃう。彼が本当にめんどくさそうにしてるのも気にしないで。
「別にいいだろ、あんたに関係ない」
「関係ないけど気になるじゃーん、俺さぁ、普段別の学部の奴と話しすることないんだもん」
「知らねぇよ」
しまいに舌打ちする。俺全然気にしないけど。
「え、じゃあさ、サークルなんか入ってる?」
「だから、どうでもいいだろ」
「いいじゃん教えてくれてもー」
「……」
全然噛み合わない会話にちょっとイラついてるのを感じる。
そんなとき、店に入ってきたオッサンが、まっすぐ俺らの方にやってきた。
白めの顎髭たくわえた、50代くらいのちょいワル風のオッサンだ。
「あ、先生」
向かいの席の彼は振り返りながら言った。
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