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第20話

「先生っ?」 あんな先生いたっけ?と思いながら、学部の違う先生のことなんか知るわけもない。なんの先生かも知らないし。 「誰だ君は?」 その先生が不思議そうな顔をしている。 「なんか、教育学部のヤツらしいですけど」 彼が戸惑い気味に紹介してくるのを、俺も外面いいもんだからめっちゃ笑顔で返す。 「どうも! 教育学部の学生で、ここの常連です。こいつのバイトしてるコンビニの常連でもあるんで」 「こいっ……つってなんだよお前」 馴れ馴れしいだろって怒ってる。けどまぁいいじゃんそこは。 「教育学部? ふぅん」 先生のほうは、髭をさすりながら不思議そうな顔をしているだけだった。彼が席を立つ。 「すみません、ちょっと今日は別の場所にしましょう、また絡まれるから」 「はぁ?絡まねぇよぉ、これから講義あるし、俺も忙しいのよー」 バカ話してたら、もう講義15分前だもん。 彼は、はぁぁ?と今にもメンチ切りそうな顔してなんか言いたそうだったけど、先生という人が「それはそうと」って話しかけたのと、俺が席を立ったのが同時で、うやむやになってしまった。 「じゃ、またな」 軽くウインクしたくらいにして店を出る。我ながら適当なもんだ。

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