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第100話

ってことは今素っ裸? ダメだ、近づいたらホント我慢できなくなりそう。 「ない。え、もしかしてうちからタオル持ってこなきゃダメだった?」 しまいにトンチンカンなこと聞いてくる。ラブホ来たことないのかな、可愛すぎるだろ!俺の葛藤なんか知る由もないだろう。こういう時に限って、タオルはリビングの隅っこの方にバスローブごとかごに入っておかれていたりする。 深呼吸して、せめて気持ちだけでも落ちつけようと試みる。タオルとバスローブを届けることだけに集中するんだ。 「あるよ、待って」 とにかく冷静に。男にタオル渡すだけで何をそんなに緊張してるんだ俺は!男の裸なんか俺と同じじゃんか! 気合いを入れて浴室に向かう。持ってきたよと言いながら扉を開けると、むせ返るくらいの湯気とボディソープの甘い香りが漂っていた。 湯気の向こうに、髪から水滴を滴らせる彼の姿。目のやり場に困る。 けど、全裸のフォルムを見た瞬間、俺を冷静にする魔法が解けた。 「悪ぃ、ありがと。タオル持ってきてないしどうしようかと思った」 言いながら本当にほっとしたように笑う姿を見て、もう俺の中の自制心は完璧にオフになってしまった。 もう駄目だった。 「……ごめん!」 タオルを受け取るのにのばされた手をつかんで、一気に抱き寄せる。ついこの間人前で抱きしめたばかりなのに、初めて抱きしめたみたいに緊張する。あの時は服越しだったけど、今は素っ裸をそのまま。股間の反応なんか、薄いパンツ越しだからもうバレてるだろうな。 彼の体は俺の腕の中で固まって、言葉すら発さない。 「ごめん、その、ちょっとムラッとしちゃって……」

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