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第101話
正直に言う。これで嫌われたとしても文句はない。欲情しちゃったのは本当のことだし、彼を愛しく思うが故なのはもう隠しようもない。
「お前ホントに綺麗だし可愛いんだもん」
抱きしめると、甘いシャンプーとボディソープの香りが彼の香りとともに匂ってきて、このまま風呂場で押し倒したい気持ちに駆られる。さすがにそれはマズイ。
しばらく黙っていた彼は、息みたいな声みたいなか細い音を喉から発して、静かに体を離した。
「っ、あの……」
俯いてしまって、どんな表情をしているのか全然わからない。
「急に、何」
戸惑って震える小さな声だったけど、浴室だからちょっと響いてちゃんと聞こえる。
「ごめん、びっくりさせるつもりじゃなかったんだけど」
させるつもりではないけど完全にびっくりさせちゃってるよね。ただ、本当に好きだから思い余ってってところは弁解せずに伝えたい。
「やっぱり好きだわ、お前のこと、ごめんな」
隠せないんだよなぁ、ホントに。我慢もできないし。本当ガキみたい。どんなに女の子とイチャイチャしたって、基本的なところは兄さんに相手してもらった、童貞丸出しのあのときと何にも変わりない。今この場に限ったら、あのときよりもだいぶぎこちないとも思う。
俺にとってホントに彼の存在が初恋そのものなんだろうな。
彼はしばらく黙ってから、そのまま俺の背中に手を回してきた。
「だから、謝んなって」
今度ははっきりした声だった。
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