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第102話

「男同士だから戸惑いとかはあるけど、お前のこと嫌いなわけじゃないんだから」 少しずつ、戸惑いもそのままに言う言葉が弱くてたどたどしい。なんだかむず痒いのは、彼が俺と同じようなことを思っていたのかもしれないと感じたからかもしれない。 「そうじゃなかったら始めっから付き合おうなんて言わないし」 俺にしがみつくようにしながら、小さな声で話は続く。 「始めはうざい奴だなって思ったけど、だんだん話すようになって、先生のこともあって、いい奴かもなって思えて。思ってた以上に、一緒にいると楽しくて、それで」 やばい。むず痒さがだんだん強くなる。心臓がバカになったみたいに速く動いているのを感じる。 「あの、付き合うって言ったのは、全然その場のノリじゃないって言ったらウソになっちゃうけど、本当に悪い気がしなくて、ちょっと付き合ってみてもいいかなって思ったからそう言っただけでさ、嫌いじゃないから、お前のこと」 彼の視線が上向く。俺と目が合った。 「どっちかと言えば、今は好き、だと思う。」 はっきりと言われると、声も出なかった。 「ちょっと話戻っちゃうけど、さっきはごめんな。本当に俺先生とか言われるの嫌いでさ。お前も俺のことそういう目で見るのかって思うと、なんかすげぇ腹が立って、それで」 小さな声で弁を述べるのを途中で止めるように、黙って唇を塞ぐ。これで三回目のキス。 彼が息を飲んだのも構わず、唇を割って舌を割り込ませた。 「ぅっ、ん」 彼が少しひるんだのを見計らって、壁に体を押し付ける。体を押し返そうとする腕を取って、そのまま指を絡めた。さすがに息苦しくなって唇を離す。

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