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第103話

「痛ぇよバカ」 震える声で言うけれど、手を振りほどこうとはしない。隙間がないくらい密着して、また唇が重なるか重ならないかくらいの距離で囁いた。 「マジでそんな煽んないで。俺もホントに我慢できなくなる」 絡められた指が脱力する。もうすっかり上向いてる下半身を、彼の太ももに擦りつけた。 「もうこんなになってるんだ、ごめんな」 彼の身体が硬くなる。けれど、やっぱり手を放そうとはしなかった。 「だから、その謝り癖直せよ」 「え?」 「いちいち謝らなくていいって」 「あ、うん、ごめん」 「だからそういうとこ」 話してるうちに、やっと彼が笑った。 「ホント馬鹿だし、真面目だな」 馬鹿は同意するけど、真面目ではないと思う。 「俺さ」 ほんの少し背伸びした彼が、俺の口に軽く唇を押しつけてくる。 「たぶん、そういうところが好きになったんだと思う」 ホントに目の前で柔らかく微笑まれた。 その瞬間、気絶したみたいに、理性を失った。 再び彼を壁に押し当て、夢中で唇を奪う。舌を絡ませると、彼の舌も少しずつ応えるように絡ませてくる。 「ん……っ、ん」 彼は振りほどき、俺の二の腕を掴む。重ねた唇の隙間から入ってきた空気が冷たく感じるほど、お互いの体温が高まってくる。 唇を離すと、戸惑って視線を落とす彼の前で、一気にTシャツとパンツを脱いだ。 「一緒にシャワー浴びよう、俺まだだから」 「えっ」 手首を掴んで、戸惑いもそのままに、湿度とぬくもりの残るシャワールームへ入る。アクリルの仕切りの中は男2人が入るとさすがに結構狭い。けど、今はこの狭さが密着出来てちょうどいい。 シャワーを捻ると、背中にお湯を浴びた。彼を背中で守るような態勢。

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