47 / 62

ブランコ ボタン 貧乏揺すり

「……誠さんに、告白されて…… それで、僕の気持ちと……悠の事もちゃんと話して………お付き合い、する事になりました……」 予想外だったのか。大輝が一瞬、驚いた顔を見せた。 「……でも、」 目を伏せ、膝の上に置いた手を重ねる。 「さっき悠から、この一年の間に何があったのか聞いたの。 ……悠は、僕を見捨ててなんかなくて。変わらず僕の事を想っててくれて……」 「……」 「……どうしよう、大輝。……僕、悠を裏切っちゃった…… どうしよう………もう、どうしたらいいか解んない……」 貧乏揺すりなのか。体が揺れたかと思うと、大輝が突然僕の肩に腕を回し、強引に引き寄せる。 「……なぁ、双葉」 驚く間もなく、カーディガンのボタンに指が掛かり……ひとつ、またひとつと外されてゆく…… 声も出ず大輝を見上げれば、真剣な顔をした大輝が間近に迫った。 「傷心の双葉を支えてきたのは、誰だっけ……?」 「……え……」 「俺だよね。……だったら、少しは靡けよ。俺、双葉の事、ずっと好きだったんだからさ」 「……だい、き……?」 前を開けさせ、差し込まれる手。布越しに僕の胸元を撫でた後、ゆっくりと滑り上がり、マフラーの上を通って僕の頬に触れる。 「俺を好きになってよ、双葉」 艶っぽく光る瞳。僕を捕らえたまま、大輝の唇が迫る。 今までの恩義を思えば、拒否するなんて出来なくて──ぎゅ、と目を瞑った。 むにっ 想像していたものとは違う感触に驚き、ぱっと目を開ける。 ──と。 「……はは、冗談!」 先程とは打って変わり、いつもの調子で無邪気に笑い出す大輝。 見れば、僕の唇に当てられていたのは……親指の腹で。 「……か、からかったの?!」 「本当、流されやすいんだね。双葉は」 「………もう、ばか」 羞恥で顔を赤らめながら、頬を膨らませて大輝を睨む。 「双葉はさ、何で俺のキスを許す気になったの?」 「……え……」 「それ、今の悠に対してと、同じじゃない?」 「──!」 何だろう…… 大輝の言葉がスッと入ってきて、心にストンと落ちる。もやもやしていたものが浄化され、一筋の光が射す。 「……大輝、ありがと」 口角が、自然と上がる。 そんな僕を、大輝の笑顔が包み込む。 「礼なら、……そうだな。 この前食べ損ねた、双葉の手作り弁当かな」 「……うん」 大輝らしい気遣った見返りに、僕はこくんと頷いた。

ともだちにシェアしよう!