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第4話

(手応えは上々だな。この調子で行くと、来月の全国ツアーも盛り上がるだろう) 夏恒例の野外フェス。 それに特別参加しているSchicksalの新曲である「answer」を生で聞いた観客の歓声に、高倉は確かな手応えを感じて、ニヤリとほくそ笑んだ。 ひと月前に声が出なくなった久弥は三日間の休暇を取った後、無事に声を取り戻した。 その理由を後で聞かされた時は、『馬鹿なのかお前たちは?!』と本気でキレたが、今となってはいい思い出だろう。 最近の久弥はラブソングを歌うと、いつにも増して声が伸びやかになる。 ついでに、何故か蓮の機嫌もすこぶるよくなる。 つまり、今日の2人は絶好調だった。 本音を言えばもう一曲くらい期待(アンコール)に応えて欲しかったが、野暮なことは言うまい。 (まぁ、もう日も暮れたしな。頑張ったご褒美ってわけじゃないが、あいつらも大人の時間を楽しんでいい時間だろう) 「やれやれ、それにしても今夜はやけに暑いな」 控え室として使っているテントに2人して早々に引っ込んでしまった彼らを思い、高倉は苦笑した。 歌は気持ちを伝える手段の一つになり得るが、直接言葉にしなければ伝わらない気持ちもあるのだと、今回の件で久弥()は骨身にしみて理解した。 本当に、それはもう嘘偽りなくーーー。 「ほら、久弥。俺の事どう思ってんだ?さっきファンの前で自作のanswerを歌ったみたいに、俺のために感情込めて言ってみろよ」 「す、好き…だって。ぁ、…あ、あぃ、あ、愛し…てる…。俺は蓮を…愛してるっ、この世の誰より蓮を愛して……ーーーッ!!」 ミーティング用の長机に突っ伏したまま背後から腰を掴まれ、突き入れられている屹立で勢いよく媚肉を抉られた俺は、堪らず白濁を吹き上げた。 ついさっきまでステージを湧かせていたSchicksalのボーカルが現在、相方の激しすぎる愛に翻弄されて悦に濡れた声を上げさせられている最中だとは、誰も夢にも思うまい。 「おいおい、久弥。またイッたのかよ?これで何回目だ?俺はまだ一回もイッてねぇのに、狡ぃだろ?」 イッた直後の敏感な体を慮るどころか、収斂を繰り返す媚肉の心地よさに酔っている蓮に体内を掻き回され、俺は受け止めきれない快感に懊悩して啜り泣いた。 お互い恋人として認識しあった事で外れてはいけない箍が外れたらしく、蓮は愛情表現だと嘯いては、とことん俺を快感で攻めたてて泣かせにかかってくる。 俺たち専用のテントの中とは言え、外には観客がいる。夜でもその熱気を帯びた観客の興奮した声が聞こえていた。 その声はけたたましい蝉の声すらかき消している。 「ほら、久弥。ファンがお前の名前呼んでるぞ。嬉しいだろ?」 (嬉しい、けど…今は、それどころじゃない…って)と、泣きながら俺は首を横に振った。 「ぁあ、蓮っ。少しだけでいいから、休ませろって……っ」 「はぁ?そんなのダメに決まってんだろ。いいからほら、いつもみたいに腰振れよ。んでもって、早く俺もお前の中でイカせてくれよ、な?」 「あっあぁッ?!ま、待って、蓮っ!蓮!!」 「だ〜か〜ら、無理だって言ってんだろぉ?ほら動くぞ。たっぷり気持ちよくしてやるから、お前もしっかり俺の締め付けてろよ?」 「そんな?!……ッんぅ、ンぁあっ、あっ、ぁああっ」 少しは人の話を聞けっ!!と思いっきり心で罵倒しつつ、俺は再び蓮の激しすぎる抽挿に喘がされた。 衣装のポケットにローション常備してるとか本気であり得ないっての! 「んっ…久弥、そろそろイクぞ。俺の気持ちごと全部受け止めろよ?」 「わかってる、…分かってるから、俺の中に早く出せって…っ!」 「任せろ、たっぷり出してやる」 その直後、身体を真っ二つにされたと錯覚するほど深々と屹立を穿たれた。 俺は身を焦がすほど熱い蓮の熱と想いが自分に注がれるのを感じながら恍惚と酔いしれる。 ーーーなんか、やばい。俺、今すごく幸せかも。 でも、やっぱり蓮はずるいと思う。 俺にばっかり、愛してるって言わせるのは、狡い。 「はぁ?狡くねぇだろ。俺はお前が寝落ちしたらその寝顔眺めて、何度だって愛してるって呟いてるからな。だから俺は狡くない」 ああ言えばこう言う。 でも、そういうところも全部ひっくるめて好きなんだよなーーーと俺はひっそりと笑い、どこにいても一際輝いている男を見つめた。 俺たちの声をかき消し、星が落ちてくるのではと危惧してしまいそうになる程に天高くに響いて鳴り止まない観客の歓声が、俺たちを祝福しているように聞こえたのは多分、俺の都合のいい思い込みだろうーー。

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