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第42話
瞳から涙の粒が零れる
頬に一筋の線を残し、落ちる
「……双葉」
誠の長い指が、それをそっと拭う
「覚えていますか…?
動物園の帰りに寄った喫茶店で
僕が告白をした後、双葉が過呼吸で倒れてしまって…」
……覚えてる
僕が悠の籠から抜けて、誠さんへと羽ばたいた日だ
「あの日、双葉の涙を見て
その理由を聞いて……思ったんです」
誠は大きな瞳を僕に寄せた
憂いと優しさが混じるその瞳に
僕は目が離せなくなる
「もう、悲しい涙は流して欲しくない
僕がこの先、ずっと双葉の傍にいる、……と…」
下睫毛に溜まった涙が、重みで零れる
優しく小さな吐息をし、誠が再び僕の涙を掬う
その指先が少し震えている…
そう感じた瞬間、僕にも緊張が走り鼓動が早くなる
数回瞬きをした後、形のよい誠の唇が動いた
「双葉より大切な人などいません…」
その綺麗な瞳に吸い込まれそうになる
躊躇いがちに伸ばされた誠の手が
僕の手の甲に添えられる
「…誠、さん」
誠の手が、まだ少し震えていた
その言葉に、嘘など感じない……
「………」
だけど、あの画像は
嘘なんかじゃない……
「…信じて、いいですか?」
誠から視線を外す
僕の言葉に、誠の瞳が緩む
「……はい」
「……!」
……隠さないで欲しかった
ちゃんと言って欲しかった……
そうじゃないと
誠さんの言葉を、この先信じられなくなっちゃう……
誠の手に力が少し入り、僕の手をぎゅっと握った
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