41 / 92

第41話

ぼんやりとしたまま天井を見る 見慣れたそれは、バイト先の休憩室だと解った ……そうだ バイト中に倒れちゃったんだ…… そこまで思い出して改めて誠を見る 僕の髪を撫でる手が止まり、長い指が離れる そして誠の口から小さく溜め息が漏れた 「…意識が戻って良かったです」 誠の瞳が左右に揺れ、眉尻が少し下がる 「……バイト……!」 僕はハッ、として店内へ戻ろうと起き上がった しかし、長椅子から降りようとする僕を誠の言葉が制する 「大丈夫です……立花さんが双葉の代わりをしてくれていますから」 「……え」 透さんが……? 「……」 何が何だかわからない 僕が倒れた後、何があったんだろう…… 「もう少し休んで下さい」 「………」 誠はその優しい雰囲気のまま、更に眉尻を下げ口角を少しだけ上げる 体は向き合ったまま……僕は誠から顔を少し逸らした 「……倒れたと聞いて、心臓が止まるかと思いました」 「……」 少し遠慮がちに誠の手が伸びる けど、その手は宙に浮いたまま行き場を失い、元の場所へと戻る 「…昨日、僕が……」 瞬きを数回した後、躊躇いがちに発せられた誠の言葉…… 「僕が双葉に……」 誠の視線が僕の首筋に移る それを感じ、僕はそこを手で覆った 「………」 視線は未だ外したまま、小さく首を振る 「それでも、傷つけた事に変わりはないです……」 誠の言葉に導かれる様に、僕は誠に顔を向けた 「……誠さん……それは僕も 同じ、です…」 そう言って再び目を伏せる 緊張から指先が震える それを隠すように、左手の指先をぎゅっ、と握った 「……昨日も話しましたが…… 九条さんを大切に思うなら 僕にちゃんと、お別れの言葉を言って下さい……」

ともだちにシェアしよう!