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第40話

胸元まで上掛けがかかり 誠はリラックスした表情のまま目を瞑っていた その隣に九条が笑みを浮かべ自撮りしているのが写真から解る 「………」 それを見た瞬間 頭の中が真っ白になった 心臓が大きく跳ね 指先の感覚を一気に失う 洗っていたグラスが 手から滑り落ちそうになった 『僕と九条の間には何もありませんから……』 あの時誠さんは、確かにそう言ったのに…… 裏切りよりも 嘘をついて隠された事の方が ショックが大きい…… 「これで信じて貰えたかなぁ」 九条は悪気のない笑顔をわざとらしく作って見せる その瞳の奥が笑っていないせいか、とても不気味だった 「……!」 急に胸に異物が詰まったように苦しくなる 呼吸が浅くなり うまく息ができず 気付けば吸ってばかりいる… ……ひっ、ひっ、 指先からじりじりと痺れると 取り込み過ぎた空気のせいで 頭の奥が痛みだし フワッ、と一瞬意識が飛ぶ 「…あれ、どうしたの? そんなにショックだった?」 九条の言葉は、僕にはもう届いていない…… 立っていられなくなって その場に踞る 身体中の感覚は消え 首を絞められた様な苦しさだけを残し 僕は意識を手離した ……… ……気持ちいい 誰だろう……誰…? ゆっくりと重い瞼を上げる 少しぼんやりとした視界の中に映り込んだのは…… ……誠さ…ん…? 大きな手が、僕の髪を撫でていた 「……双葉」 誠と目が合う ……あれ、何で誠さんが…? まだ働かない頭のまま 僕はぼんやりと思考を巡らせた

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