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第44話

誠のマンションに入る こんな風に一人で入るのは初めてで、何だか緊張してしまう…… そっと玄関を開け、誰もいない部屋へと上がる ここに来るのは 今回で四回目だ…… 二人掛けの白いソファが視界に入る 三回目に来た時 誠に呼ばれて隣に座って そんな雰囲気だったのに ……何も、なかった… 廊下へと消えた誠は 暫くして何事もなく戻り テーブルを挟んだ向こう側へと腰を下ろしてしまった…… その距離が まるで心が離れてしまったようで…… 「………」 もやもやとしたものが心に涌き出てしまい 払拭するようにソファから視線を逸らした そして手中にある鍵の存在に気付き、開いてそれを見る 『…ねぇ、双葉チャン 本当は何があったの?』 バイト先の休憩室から出ていく誠を見送った後 そう言った透の言葉を思い出す 『…言いづらいなら言わなくてもいいわ でも、これだけは言わせて頂戴 双葉チャン… そんなにいい子じゃなくていいのよ…?』 「………」 透さんはそう言ったけど 僕は全然いい子じゃないよ…… 首筋に残る、悠の痕にそっと触れる 本当は、誠さんを責める資格なんてないんだから…… 口を真一文に引き結ぶと、ポケットの中の携帯が震えた 「……!」 画面に表示された名前を見て、心臓が大きく跳ねる 『大丈夫か? もうすぐバイト終わるけど、今どこ?』 悠からのメールに、指先から恋しさが募ってゆく 『ごめんね、悠 今誠さんの』 ここまで打ち込んだ時、玄関の扉が開く音がした

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