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第1話 幼なじみ

  人は物心がついた頃には人生のモードが決まっている。 それが、黒崎月乃の口癖であった。 外見、性格、才能エトセトラ、いろいろな要素が優れていればいるほどイージー、 何かしら最低レベルのものがあるとハードモードだと そんな事を言ってはため息をつき、軋轢の多い人間関係を築く そんな、男子校に通う高校二年生が黒崎月乃だ。 進級し、新年度が明けたばかりで短縮授業のため 月乃は寮の談話室で友人に向かっていつもの口癖をこぼしている。 「じゃあ、月乃は顔がいいからイージーなの?」 そしてそれに対して、太陽のような明るい笑顔で返すのは、橘朝陽。 高校二年生にしては童顔気味だが、 人懐っこい性格と愛嬌でクラスの人気者だ。 「俺がイージー?  君、喧嘩売ってんのか?」 「ええっ!?なんで!」 「俺みたいに性格の悪い奴はハードなんだよ、  君ほんとに単純思考だよな」 はあ、とため息をついて朝陽の頭を撫でる月乃は 顔立ちこそ美人と形容されるような整ったものだが 人見知りの度が過ぎてつい口が悪くなってしまう悪癖を持つ、 友達が非常に少ない生徒だった。 月乃がまともに話せる相手は数少なく、 一人は目の前の朝陽、そして、 「月乃は自分で暮らしにくくしているだけだろう、なかなかのドMだと思うぞ」 「ははっ、そうそう。  生きにくそうで笑えるね。  もっと上手くやればいいのに、俺みたいに」 「うるせぇな君らに聞いてねーよ、  貶すんなら話に入ってくんな」 ドM、と月乃を見て真顔で言い放った長身の男前が駿河一夜、 くすくすと綺麗に笑う爽やかそうな優男イケメンが西園寺天だ。 眉間にシワを寄せて睨み、口の悪い月乃などなんのその、 いつもの事だというようにあしらってしまう。 やたらと慣れているようなあしらい方もそれもそのはず、 この四人は幼稚園からの幼なじみであり お互い家族のように育ってきたのだ。 「まあまあ、二年生になったんだしさ、  月乃にも友達増えるといいな!」 「ついでに童貞も卒業できたらいいねぇ」 「……月乃、もしもの時は男もいいらしいぞ、  男子校だしな」 「せっかく朝陽に癒されたのに君ら二人本当にうるせぇな」 冗談を言い合って、毒舌を吐いても許してくれて そんな幼なじみとの関係は これから卒業まで、ずっと続いていくんだろうと 月乃はそう、思っていた。  

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