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第1話

 僕は安藤龍、高校2年生。現在僕の幼なじみとその兄のことで、大変困ってる。抗うことができたらいいのに、それがどうしてもできない。  だってふたりは友達の少ない僕にとって、大切な友達兼幼なじみだから。  事の始まりは、中学2年のとき。幼なじみで同い年の藤島怜司の部屋で、一緒に宿題をしていたときだった。 「怜司、僕に合わせないでよかったのに。バスケ部のレギュラーのおまえが仮病を使って休むとか、後輩に示しがつかないんじゃない?」  休み時間、同じクラスの怜司に数学の宿題がさっぱりわからないとボヤいたら、教えてやると笑顔で返された。てっきり部活が終わったら教えてくれるものだと思ったのに、放課後になり「頭痛が酷いから部活を休む」なんて言い出して、堂々とズル休みした怜司。  具合の悪いフリをした彼が僕を連れて、自宅に帰ったのだった。 「龍は、なんでも難しく考えすぎなんだよ。あのな――」  僕としては怜司にズル休みさせたことについて、心を痛めたからこそ、後輩に示しがつかないと注意したのに、笑いながらあしらわれてしまった。 「龍、ちゃんと聞けよ。教えてるのに」 「ごめん……」 「俺が部活を休んだことを気にしてるなら、龍が大事にしてるものをくれたら、チャラになるよ」 「僕が大事にしてるもの?」  小首を傾げて目の前にいる怜司を見たら、ぱっちり二重の瞳を細めて見つめ返す。 「宿題が無事にコンプリートしたら、大事なものをもらうから」 (――僕が大事にしてるものを、どうして怜司が知ってるんだ? 幼なじみだから?)  そんな疑問が頭の中に浮かんだが、宿題をやり遂げたい気持ちが勝ったので、あっという間にその考えは消え去る。 「怜司が教えてくれたほうが、先生よりもわかりやすかった! なんだかなぁ」  ローテーブルの上に置いてる教科書とノートを閉じると、目の前にいた怜司が隣に移動し、僕の頭を撫でた。 「龍の地頭はよくできすぎていて、難しくごっちゃに考えるのがいけないって、さっきも言ったろ?」 「地頭が良くても、なんの得もないよ。塾に行ってるのに成績なんて、平均点ギリギリだし。部活と勉強をうまくやってる怜司が羨ましい」  言いながら唇を尖らせたときだった。いきなり顔に影がかかったと思ったら、唇に柔らかいものが押しつけられる。近すぎて焦点が合わなくてもわかる。  怜司が僕にキスしていることを! 「なっ、なにやって……。男同士なのに!」  すぐに解放された唇で、怜司に文句を言った。 「龍のファーストキスが、どうしても欲しかったんだ」 「は?」 「俺はずっと、龍のことが好きだった。欲しくて堪らないくらいに」  逃げる間もなく、ぎゅっと抱きしめられた躰。下半身に怜司の固くなったモノが布越しに伝わってきて、僕に告げたことが本当なんだと、否応なしにわかってしまった。 (どうしよう。僕は幼なじみとして、怜司のことが好きなのに――) 「俺のオナニーの相手、全部龍なんだよ」 「つっ!」  耳元で吐息がかかるように告げるなり、耳の縁を熱い舌先がなぞっていく。ゾワゾワしたのを感じて、怜司の腕の中で身震いした。

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