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第15話
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塾の個別指導と玲司や浩司兄ちゃんに勉強を教わったおかげで、第1志望の男子高に合格することができた。ひとつ意外だったのは――。
「迷いまくってた玲司まで、同じ高校を受験するとは思わなかったよ。ここのバスケ部、そこまで強くないのに」
偶然同じクラスになれた玲司に、思わずボヤいてしまった。
「強くないからこそ、俺の力でなんとかしてやろう! みたいな気持ちが芽生えてさ」
「ふーん。練習頑張ってね」
「龍は部活入らないのか? 見て回るなら、このあと付き合ってやるぞ?」
入学式が滞りなく終わり、先生やクラスメートとの顔合わせも無事に終了したので、あとは各々校舎内を探索したり、気になる部活動に顔を出したりするだけだった。
「部活動する体力もなければ、気力もないよ。きっとここでの勉強についていくのに、やっとだと思う」
学年によって制服のブレザーとスラックスの色が違うため、赤点取りまくって留年したら、間違いなくクラスで浮いてしまうだろう。
ちなみに今年の一年生は、明るいグレーのブレザーとスラックス。二年生は深緑で浩司兄ちゃんがいる三年生は濃紺だった。
「玲司は僕のこと気にせずに、バスケ部に顔を出しなよ。きっとすごく歓迎されるだろうね。昨年の地区大会の最優秀選手賞をとってるんだし」
教科書の入っていない空っぽのカバンを手にして席から立ち上がり、玲司の肩を軽く叩く。この一年でぐんと背が伸びた玲司。首を思いっきりあげないと、玲司とは顔が合わせられない。
(やっぱり20センチの身長差は大きいな――)
「じゃあね、先に帰ってる」
ひらひら手を振って教室を出たら、目の前に立ちはだかる誰か。制服の色で二年生だとわかったものの、浩司兄ちゃん以外ここに知り合いはいない。
「あの?」
「おまえ、安藤龍?」
「そう、ですけど、なにか?」
上級生に呼び出しをくらうような、服装ならびに変な態度をしているつもりは毛頭ない。
「ちょっと話がしたいだけ。ついて来い」
見知らぬ二年生は顎でどこかを指し示し、気だるそうに廊下を歩きはじめた。踵を踏み潰してる上靴を引きずるように歩く後ろ姿を見ながら、仕方なくついて行く。
「俺は二年の樋口。藤島先輩のセフレのひとりさ」
「浩司兄ちゃんの……」
ボソッと呟いた瞬間、いきなり胸倉を掴まれた。
「幼なじみだからって、でかい態度しやがって」
「へっ?」
「藤島先輩を名前呼びするとか、おまえ生意気なんだよ」
(なにこれなにこれ、浩司兄ちゃんのセフレ怖すぎるんだけど! というか樋口先輩がセフレのひとりと言った時点で、浩司兄ちゃんってば何人セフレがいるんだよ……)
「すみませんでした。本当にごめんなさい……」
目の前にある怒った樋口先輩の顔が怖すぎて、謝る言葉しか出てこない。入学式早々、こんな目に遭うなんて。
「そこの二年、龍から手を放せ!」
背後から聞こえた怜司の声で反射的に振り返ると、樋口先輩以上に目を吊り上げて怒り狂った怜司がそこにいた。
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