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第28話

*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜  ゴールデンウィーク初日、両親はレンタカーを借りて、お隣と一緒に温泉旅に出かけた。いってらっしゃいと見送ったあと、嫌々ながら自室に引き籠る。せっかくの連休を無にするような、大量の宿題が出されたせいだった。さすがは進学校と言ったところだろう。 「ちょっと待て、嘘だろ……。まだ授業で習ってない範囲まで出てるんですけど!」  これまでの復習だけじゃなくて、予習までさせるためにこの宿題が出されたことを、あらためて思い知った。  分厚いテキストをパラパラ捲り、予習しなければならない宿題をチェックしてみる。そこまで量は多くなかったが、わからない問題を含めると、それなりの量になってしまいそうだった。  こういうときは迷うことなく、怜司にヘルプするのがいつもの習わし。急いでスマホを手に取り、LINEを起動する。 『怜司、宿題進んだ?』  文章を打ち終えて送信すると、すぐに既読がついた。時刻は午前11時半過ぎ――僕の宿題の進み具合は、全体の三分の一に届きそうなくらいだった。 『それなりに進んでる。あと少しで半分ってトコ。予習部分は兄貴に教えてもらった』 (この量の半分を終えたって、怜司のヤツどんだけ早いんだよ。頭の良さを、少しは俺に分けてほしい!)  返信された怜司の文面に、兄弟の羨ましさを感じる。こういうとき、ひとりっ子は損だと思いつつ、返事をすぐに打ち込んだ。 『お昼食べてから、そっちに行ってもいい? わからないところがたくさんあって、全然宿題が終わらないんだ』  中二のあの件のあとは、ふたりきりにならないように、玄関で勉強を教えてもらうことにしている。今回も同じようにしてもらうつもりだった。 『俺は構わないよ。ついでに兄貴に予習部分を教えてもらえば?』 『助かる。それじゃあとで行くね』 『こっちこそサンキュー! 龍に貰った服、大事にする』 (怜司のヤツ、これでお礼言うのが3度目だって、気づいてるのかな。義理堅いというか――)  そんなやり取りをしたあと、午前中に自力で解読できる範囲を中心に、勉強に集中したのだった。  ピンポーン!  レンチンのお昼ご飯を食べ終え、宿題を入れた手提げ袋を肩にかけて、怜司の家を訪れる。インターフォンを鳴らすと、すぐに怜司が顔を出した。 「龍、どうぞ」 「あ、うん。ありがと」  大きく扉を開けて入るように促されたので、家の中に足を踏み入れた。適度に広い玄関に腰をおろし、肩にかけてる手提げ袋から分厚いテキストを取り出した。 「怜司、あれから結構進んだ?」 「全然。難しい問題で躓いちゃって、時間を取られたせいで、ほとんど進んでない」 「だよね。僕なんて無理だと思った問題を飛ばして、やっと半分ってところだよ」  言いながら、虫食い状態のテキストを怜司に見せつけた。 「兄貴に聞いたんだけど、毎年こんな感じなんだって。部活が休みになる理由がわかった感じ」 「そうなんだ。せっかくの連休なのに、悲しすぎるよね」 「とりあえず龍がわからないところから、問題を埋めていく感じにする?」  怜司からの提案に、二つ返事で返した。埋まっていない最初のページを開き、わからないところを指差すと、怜司は先生よりも丁寧にわかりやすく教えてくれる。そのおかげで、おもしろいくらいに問題を解き進めることができた。

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