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第62話

「さすがは菊池。藤島の名前を出したら、1年が素直にやって来ると言い切っただけあるのな」  音楽室の中にいた見知らぬ3年生が楽しそうに言うと、僕を連れて来た背後にいる3年生がクスクス笑う。 「強引に連れ出そうとしちゃったことに、不審がられたときは焦ったけどね」  どこか楽しそうに言うなり、僕を羽交い締めにした。 「なにするんですか!」 「暴れるなって。そこにいる先輩が優しくしてくれないぞ♡」  耳元でアヤシク囁かれ、ゾワっとしたものが背筋を走る。 「今年入学した1年の中でも、綺麗めなヤツだなって目をつけていたら、最近藤島とつるむ回数が増えてんじゃん。さては付き合って、バコバコやってんだろ?」  へらっと笑って近づいてくる見知らぬ3年生を、キツく睨んでやる。 「そんなこと、関係ないじゃないですかっ」 「いいね、その目。俺の与える気持ちよさに喘いで、涙目になるのが楽しみだ」  片手で両頬を鷲掴みされ、ぎゅっと握られる痛みに顔が歪んでしまう。 「おいおい小山田ってば、かわいい顔を潰すなよ。ヤル気が失せるだろ」  羽交い締めしながら、硬くなったモノを僕のお尻に擦りつけられてしまい、おぞましいそれに抵抗する言葉や力が一気に抜け落ちた。 「菊池、ナニやったんだ? 1年が急に大人しくなったんだけどよ」  ニヤついた目の前にいる3年生が僕の顔を握り潰したまま、首筋に舌を這わせる。 「ンンっ!」  味わうように舐めて、首の付け根に吸い付かれてしまった。きっと、キスマークがついてしまっただろう。 「おいしいところは、ほかにもあるのかなぁ?」  僕の顔から手を放し、ワイシャツのボタンを外した3年生の手によって、上半身をあらわにされてしまった。 「やめて、く……ださ、ぃ」 「ピンク色の乳首、はっけーん!」  すると背後にいた3年生が、嬉しそうに僕の躰を覗き込む。 「地味にもう勃ってんじゃね?」 「藤島に毎日弄られて、感じやすくなってんのかもよ?」  そして目の前にいる3年生に、敏感になってる部分を優しくちゅっと吸われてしまい――。 「やっん、ぁあっ!」  出したくないような、鼻にかかった声をあげてしまった。あまりの恥ずかしさに、羽交い締めから逃れようと躰を捻ったら、背後にいる3年生が僕の耳元に告げる。 「おまえがそうやって抵抗すると、俺のコレに当たって、すげぇ気持ちいいんだわ。ガマンしきれなくなった挙句に、小山田を差し置いて、後ろからぶっ刺してやろうか?」  低い声で言って、僕の耳朶を口に含む。くちゅくちゅ音をたてて吸われたせいで、ゾワゾワしたのが背筋を駆け抜け、抵抗する力がふたたび削がれてしまった。 (どうしよう。このままじゃ僕は、このふたりに――)  助けてくれと声を出しても、音楽室ではまったく響かない。しかも抵抗したら、背後にいる3年生を感じさせてしまう。

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