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第1話 お隣の
僕、倉科 結斗 の家は父親が単身赴任で、母親が企業でバリバリ働いている。
昔から忙しい両親なので、慣れっこだ。
さすがに小学生の頃は淋しかったけど、中学生、高校生の今となれば大丈夫。
中学生から始めた部活は美術部で、絵を描くのが大好きな僕にはぴったりだと思う。
部活が終われば、真っ直ぐに家へと帰る。
だけど、僕は荷物を置いて家事を少しこなしてから再び家を出る。
そして、玄関に鍵を掛けると隣の家へと向かう。
勝手知ったる隣家は、僕の幼馴染みで今頃何処かで遊んでいるだろう近江 翔 の家だ。
幼馴染みの僕達は小学生の頃からの仲良しだ。
だから、両親が忙しく所謂 鍵っ子だった僕は自然と翔の家に長居していくようになった。
翔のおばさんは出版社勤務で忙しく、僕のお母さんと似ている。
だけど、通信販売の会社の社長をしているおじさんは時間に余裕が有るみたいで、いつも夜の七時には帰宅していて僕を迎え入れてくれる。
「ただいま~!」
僕が玄関を開けて中に入ると、リビングから背の高い男の人が現れる。
翔の父親である、海里 おじさんだ。
おじさんは、今年43になるとは思えないほど若く見える。
そして顔も整っているから、優しい顔で見つめられると何だか恥ずかしくなってしまう。
「お帰り、結斗」
そう言うと、おじさんは優しく笑っていつも頭を撫でてくれる。
その時のおじさんの目元にほんの少しだけど皺が寄るので、そこで少し歳を感じる。
歳上の男の人なんだなぁ…と。
でも僕のお父さんとは全く似ていない。
海里おじさんは、歳をとっていても若々しくて本当にカッコいい。
本当の年齢を言われても誰も信じないんじゃないかなぁ?
そんな事を思いながら靴を脱ぐ。
「疲れただろう?」
「ううん、別に。おじさん今帰ったの?」
「あぁ。さっき帰った所だよ」
「ナイスタイミングだったね!」
僕が言うと、おじさんが背中に手を回して中へと招き入れてくれた。
大きな手が温かい。
こんなやり取りも半年続いている。
中学生の時は翔も居たし、おばさんも今より忙しくは無かった。
けれど今では、翔は放課後に遊んで帰ることもあって夜遅くなり、おばさんは編集部部長になったとかで夜中になることも増えた。
なので、高校生になってからは二人の事が多くなった。
今夜も海里おじさんと僕だけだ。
「じゃぁ、ご飯作るから」
「今晩は、なぁに?」
台所に僕がマイエプロンで立つのも定番で、おじさんが後ろから覗いてくるのもお決まりだ。
「おじさんの好きなハンバーグだよ!」
「そうか。なら早く風呂から上がらないとな!」
嬉しそうに台所を出ていくおじさんは、何だか子どもみたいで可愛い。
僕はおじさんが喜んでくれるように、愛情を込めた。
勿論、おばさんと翔の分も念のために作りおきしておくよ。
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