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第131話 充電時間
おじさんといつか別れる時が来るかもしれない悲しさと、怖さ。
そして今こうして側に居られる嬉しさと、抱かれている暖かさに僕の涙は当分止まりそうもなかった。
今は泣いてもいいよね。
こうして暫く泣いた僕に、おじさんは優しく背中を撫でながら髪の毛にキスを落としてくれた。
漸く僕が泣き止むと頬を包み込んで顔を覗く。
「う…、泣いてごめんなさい」
「いいよ。泣いたらいつでもこうしてやるから」
優しい顔で微笑みながらチュッと音の鳴るキスをくれた。
「ふふふっ」
思わず笑った僕に、おじさんの笑みは益々深くなった。
「あ~。結斗の笑顔を見るだけで、俺幸せ過ぎて泣いちゃいそうだ」
おでことおでこをコツンと合わせる。
おじさんは、そのまま動かなかった。
目を閉じているから何を考えているのか全く読み取れない。
だけど、その表情はとても柔らかくて…。
「…僕も」
同じ気持ちを共有出来てる僕とおじさんは、世界一何を仲良しの恋人同士だと思った。
どれくらいの時間をそうして過ごしていただろうか?
実際はそれほどでも無かったかもしれないけれど、僕からすると信じられない時間が経過している感覚だった。
「よし‼結斗の涙も止まったし、俺の結斗不足も少しは解消されたな」
そう言いながら海里おじさんが体を起こした。
くっついていた温もりが離れると寂しいけれど、今日からまた側でいつものように暮らせると思うと元気も出てくるというもので。
「僕も充電完了した‼」
ニコッと笑って答えると、おじさんが頭をワシャワシャ撫でてくれた。
「よ~し、じゃぁ出発するか‼」
「うん‼」
答えた僕だったけど、おじさんがエンジンを掛けようとして止める。
「結斗…」
どうしたんだろうと思いながらおじさんを見ると、外を指差した。
「形に残る思い出作ろう‼」
「え?」
僕が疑問を浮かべて首を外へと向けると、そこには看板があった。
『永岡写真館』とゴシック調で書かれていた。
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