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優しい刺1
萌がナツオの彼女に泣きついたせいか
騒ぎはすぐにナツオの耳に届いた
廊下に駆け付けたナツオの前には
廊下に座り込んだ佐倉がいた
ナツオの彼女は、泣きじゃくる萌の背中に手を回し
なだめながらすぐに二人の部屋に帰った
怪訝そうな表情を浮かべこちらを見た通行人と目が合い
気まずそうに竜一を見上げると
竜一はチッ、と舌打ちした
そして僕の二の腕を強く掴み引っ張る
……あ…
よろけて竜一の胸の中にすっぽりと収まった
竜一を見上げると
竜一は冷たい目で佐倉を睨んでいた
ナツオは佐倉を立ち上がらせると
竜一に目をやる
再び緊張した雰囲気に
僕は不安で竜一の服を掴んだ
「杉浦、悪いが部屋貸せ」
竜一の大きな手が
僕の肩を抱いた
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