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第28話
うっすらと痕の残る首筋を、片手で覆う。
『ずっと、好きだったんだ』──思い出されたのは、夢か現 か解らない、ホテルのベッドでの出来事。
……そんな事の為に……
汚されたんだ……
『人種、性別、性的指向、性自認』──殴られる事に快感を覚える性癖を持っているかは、解らない。
でも、そうまでして佐倉は……竜一と───
「おい」
隣から腕が伸び、僕の肩に回される。グイと引き寄せられる身体。力強い手。
心ごと掬い上げられ、竜一の温もりや匂いに包まれれば、心の中に掛かった黒い靄 に一筋の光が射す。
「なら聞くが、テメェの男の傷は……どう説明するんだ」
威嚇にも似た声。
チラッと竜一の横顔を盗み見れば、那月を睨み付けるように見据えていた。
「あぁ、ナッチね。……うーん。変態佐倉から、真実を聞き出すための“名誉の負傷”……とか?」
「───だと、いいがな」
吐き捨てるようにそう言い放つと、まるで僕を守るかのように、僕の二の腕を掴む手に力が籠められる。
「……は?」
目を見開く那月。
それには目もくれず、僕から手を離した竜一が背を向け足早に歩き出す。
その後を、慌てて追い掛ける。
「ハァ──?! なにその言い方!!」
含みのある竜一の物言いに、那月が不満をぶつける。
「こらー、待てーッ! バラすぞー!!」
その声が、聞こえているのかいないのか。隣に並んだ僕の肩に腕を回し、引き寄せる。
まるで、那月に見せつけるかのように。
【END】
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