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凄く幸せ

お互い初めて── 俺に委ねて………なんて言ったものの、緊張しすぎて手元が震える。伸之は気持ちばかり焦ってしまい、ぎこちなさを隠すことができなかった。 「伸之……大丈夫。俺、ちゃんと準備してるから」 真っ赤な顔をしてそう言う充は、落ち着けと言わんばかりに伸之の頬に手を添えもう一度キスをした。 「好きにしていいから……俺のこと、愛して」 充がここまで言ってくれている。堪らなく愛おしい。もっと早くにこういう事をすればよかった……充の出方を伺ってもたもたしていたせいで、充に余計な事を考えさせることになってしまった。 「ずっと……こうしたかった」 伸之は熱り勃つお互いのものをそっと握りゆっくりと撫で回す。目の前で切ない表情を見せ遠慮気味に吐息を漏らす充が可愛くて、先ほど聞いた話が頭を過っては嫉妬心が湧いた。 それでももうそんな事は関係ない。目の前にいるこの愛しい人は、自分のことを愛してくれてる。 「気持ちいい……」 「嬉しい……」 「好き?」 「うん」 「大好き?」 「ふふ…… 好きだってば」 二人して顔をくっ付け合い、体を弄りながら愛を囁く。どちらともなく唇を重ね、確かめ合うように舌を絡めた。 伸之は大切な宝物に触れるかのように充の顔をそっと手で包み込み、慈しみながら何度も何度もキスをした。 初めて触れる充の肌は柔らかく滑らかで、自分のそれとは全く違っていた。ゆっくりと手を腰から下へ滑らせていく。 「遠慮しなくていいから……」 伸之の手が尻に触れ、少しだけ体をびくっと震わせた充は自ら足を開き、躊躇う伸之にそう囁く。 「伸之が……解して」 俯き顔を赤くして恥じらいを見せる充に興奮した。 初めてで最後までちゃんとできるだろうか、なんて不安も何処へやら、漏れ聞こえる可愛い喘ぎ声に気持ちが昂り、思いのまま伸之は充を抱いた。直接感じる快感に加え、高揚した官能的な表情を見せる充の姿に酷く興奮し、喘ぐ声に混じり伸之の名前を呼び、涙を零す充の姿を見て伸之は独占欲が満たされていった。 「ごめんね、痛くなかった?」 事が済み、冷静さを取り戻した伸之は充を気遣いそう聞いた。自分ばかり満足してしまい、最中ずっと涙を流していた充はどんな気持ちだったのか今更ながら不安になる。充だって初めてだと言っていた。自分に比べ体の負担が大きいのは伸之にだってわかる。夢中で求めてしまって、もしかしたら泣くほど痛いのを我慢してくれていたのかもしれない。充はそういうところがあるから尚更心配だった。 「ううん……大丈夫。凄く、その……気持ちが良かったから」 充は伸之の心配をよそに、悪戯っぽく笑ってそう言った。「やっと抱いてもらえて凄く幸せ」とも言ってもらえて伸之は嬉しくて恥ずかしくて悶絶しそうになった。今もこうやって二人で裸で抱き合いながらベッドで横になっているのも照れ臭くてどうにかなってしまいそう。 笑いながら、充の頬に残る涙の跡を指先でそっと触れる。伸之の思いが伝わったのか、充はその手を取り微笑んだ。 「泣いたのはね、辛かったからじゃないから。嬉しくて……勝手に出た。心配してくれてありがとう。大好きだよ」 充の言葉に安心する。「俺も好きだよ」と囁きながら、またぎゅっと抱きしめキスをした。 伸之と充は、初めて体を交え幸せな気持ちで二人一緒に眠りについた── 翌朝、充が用意した朝食を二人で食べる。 昨晩出しそびれたと言って、充は手作りのチョコプリンを伸之に渡す。可愛らしい小瓶に入ったそれはリボンまで施されていて、まるで店に売っているプロが作った物のよう。 伸之は「本命チョコがもらえるならバレンタインも悪くないな」と言って喜んだ。 end…

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