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トモダチだよな2
―――がしっ
その手首をセツが掴む。
「え・・・?」
何するんだとセツを睨んだ。セツは無表情のまま俺を掴む手とは反対の手で、何かを手繰り寄せる。
「・・・それ」
手錠だった。片方はベッドに繋がれていて、それをつけられたら完全に逃げられなくなるだろう。
「えっと、セツさん・・・?」
まさかそんな事するわけないよね?と願いを込めて問いかける。
「ああ、わかってる、俺達友達だからな」
「そ、そうだよな、セツ!お前はそこまでやばい奴じゃないもんー」
―――がしゃん
「だから、ゆうたの一番は全部俺のものだ」
笑顔のまま俺の手に手錠をかけた。
「なっ、はああーーー????」
自らの拘束された右手を見下ろし、それからすぐにセツの顔を見上げた。
「お前!今自分が何してるかわかって・・・!」
「わかってる」
手錠で拘束された俺の手首を愛おしげにちゅっと口付けてくる。
「俺らの“友達”ってのはこういう形の事だろ?」
「違う!!!」
断じて違う!どこをどう間違って捉えたらそうなるんだよ!
「照れるなよ」
「照れてないわ!」
「お前後ろ使った事ある・・・わけないか。オイルもってくるわ」
「ちょ、ちょっと待てこら!!」
物騒な事言い残してどこかへ行くな!いや、どこかへ行ってもいいけどこの手錠を外してからにしてくれ!必死に叫ぶがセツは聞く耳を持たない。
(なんなんだ!もう!)
前々から自己中な奴だったが、こんな風に巻き込まれるなんて初めてだった。酔っ払ってるのか、溜まっているのか、知らないけど自分勝手すぎる。
(今までも振り回されたけど・・・)
なんだかんだ俺の事を大事にしてくれているのはわかっていたからまだ平気だった。
(・・・ん?)
大事に・・・?
「悪い、ちょうど切らしてたからオリーブオイルで・・・って、何黄昏れてんだ、ゆうた」
俺がぼーっと考え事をしているとセツが何かを持って現れた。
「セツ・・・、」
俺は何を言ったらいいのかわからなくなって言いよどむ。
「ゆうた、ベッドにのれ。俺は床でも全然構わないが、体痛めるのはお前だぞ」
「・・・」
大人しく言われたようにベッドに乗り上げると、セツは不思議そうな顔で俺を見下ろしてきた。
「どうした?借りてきた猫みたいになっちまったけど」
「・・・あの、さ」
「なんだ」
俺の隣りに腰掛け、手にオイルをたらしていくセツ。俺はその様子を眺めながら、気になっていたことを口にしてみた。
「今まで、気付かなかったけど・・・」
ふと、思い出されたのだ。今までのセツの様子を。そして分かった。
「お前、俺の事・・・」
中一の時、セツは、上級生に絡まれた俺を庇って一緒にぼこぼこにされた。今ほど仲も良くなかったはずなのに、助けに来てくれたのだ。お互いボロボロだし先生にはこっぴどく叱られるしで、結果的には「助けられた」とは言えない状況だったけど、でも、あの時の俺は嬉しかったのだ。
いつもすまし顔で俺を茶化していたセツが、俺のためにボロボロになってくれて、すごく嬉しかった。
(セツ・・・)
それからは一緒につるむようになって、いつの間にか・・・隣りにいるのが当たり前になっていた。そうやって出会ってからの約十年間ずっと、セツは俺の事を隣りで見守っていてくれた。
「セツ、俺の事・・・好き、なのか・・・?」
友達以上として。今までずっと意識していたのか。
「・・・っ」
無表情のセツに感情がともる。頬が少しだけ赤くなるだけで、俺以外では気付かない差だった。でも、俺にはわかる。十分すぎるほどの、答えだった。
「セツ・・・」
「・・・気持ち悪いだろ。ずっと友達と思ってた奴に、そんな感情向けられてたなんてさ」
「・・・まあ・・・」
だって、俺ら男同士だし。友達だし。十年ぐらい一緒にいるから家族並みになんでも知ってるし。・・・実際何も見えてなかったみたいだけど。
「・・・そんな、急に受け入れられる事じゃない」
「だろうな」
「あと、手錠を当たり前のように所有してる事もびびってる」
「それはスダが置いてった奴。別に俺のじゃない」
「す、スダって親戚の、刑事やってる人だっけ」
「ああ」
「てことは・・・これ本物の手錠なのか?!」
「いや、趣味用」
「・・・は?」
「奥さんが家の掃除来るからって道具関係がそこのダンボールで送られてきた」
「・・・」
俺の白けた視線を、これまた白けた瞳で受け止めるセツ。
「ま、そんなわけで・・・置いとくだけってのもあれだし、だから試しに使ってみようかなって思ってさ」
「その実験台が俺か、なるほど・・・くたばりやがれっ」
「ははっ」
セツはケラケラと笑って俺を押し倒してくる。下がベッドだし、体を支えられながら倒されたので痛みは無かった。
「・・・で、ゆうた、お前はどうなんだ?」
見下ろされながら囁かれる。
(俺は、俺の気持ちは・・・?)
目の前の茶色の瞳はやけに熱っぽくて、俺にも伝染しそうなほどだった。男相手とか、友人相手とか、そういうこと全部抜きにして“セツ”自身を見つめるとしたら、俺の気持ちはどうなんだろう。
考えて、目の前の男を見つめて、また考えて・・・。
「・・・わかんない」
わかんなかった。わかるわけがなかった。
「そうか」
その言葉を聞いたセツがにやりと怪しい笑みを浮かべる。
「じゃあ、わかるまで試す」
「は?あーっちょ、うああっ」
ぬるっとよく滑るセツの指が、通常なら排出に使われる場所に差し込まれた。びくりと震えた後背中が強張り、体中に緊張が走る。
「落ち着け、まだ指だ」
「まだって・・・ああっそれ以上、あるわけ?!ハアっ、うう!」
「保健体育を思い出せ」
「あれは男女の内容だろうが!あと使ってる穴も違うわ!!」
「・・・それもそうか、って、これから先の事わかってんじゃねえか、ゆうた」
そういってまたケラケラと笑われる。
「うるさいっ!俺とは一生縁のない情報だろうなって思ってたんだよ!馬鹿!」
「いやいや、縁は中学生の時からあったぞ、俺と出会った瞬間からな」
「こっ怖いこといわないでくれません???」
俺そんな頃から後ろ狙われてたの!??
「怖がられるかなと思って我慢してた」
「んなもんトラウマ決定だわ!!!」
訂正する。ずっと隣で見守っていた、じゃなくて、ずっと隣で穴を狙っていたに訂正する。そしてお前は友達じゃない。ただのヘンタイだ。
「そんな顔するなよ、友達も恋人もそう変わらないだろ」
「お前が言うとその台詞笑えない」
真顔で言い返すと、すごくいい笑顔で「確かに」と囁かれた。その低い声にゾクリと腰が震える。
―――ぐちゅり
指が掻き回され、いやらしい音がセツの部屋に響く。
「アあっ?!くうっ」
後ろは違和感しかないし、音を聞いているのも恥ずかしいし死にそうだった。
「ひっやめ・・・ああっ」
「指増やすぞ」
「ばかいっああっ?!」
指一本でもきついのに、二本に増やされてしまった。俺、涙流して嫌がってんのに、なんでこいつ笑顔で指増やせるわけ?鬼なの?
「きついけど、案外入るもんだなー」
「この鬼畜野郎っ・・・っうぐっ」
「はは、俺が本気で鬼畜になったら、ゆうたはただの便器になるぞ。それか奴隷」
「なっ?!」
衝撃で一瞬呼吸を忘れ、それからわなわなと震える。
(便器、奴隷・・・)
この震えは恐怖じゃない、怒りからだった。
「もうお前、本当にいい加減にしろ!」
上半身を起こし、怒鳴るように叫んだ。
「?!お、おいゆうた」
「お前なんか・・・友達でもなんでもない!!」
セツのこと、俺の中ではなんだかんだ「かっこいい友達」だったのに。
(セツは俺の事、そんな風に思ってたのかよ!)
本格的に悲しくなってきた。涙で濡れる顔を見られたくなくて、枕に顔を埋める。
「セツなんか、大嫌いだっ!!うう・・・ぐすっ」
「ゆうた・・・」
しばらくそうして枕に顔を埋めていると、上からセツの声が降ってきた。
「・・・ごめん、ゆうた」
その声は先ほどまでのからかうようなものではなく、まったく別人のような、優しい声だった。
「悪かった、いじめ過ぎた・・・お前は奴隷じゃないし、そんなことするつもりもない」
「っく・・・ぐすっ」
「だから、だから嫌わないでくれ・・・頼むから、・・・」
後ろから俺の手に自らの手を重ねてくる。そして、恋人繋ぎの形で握りしめてきた。その状態で囁いてくる。
「俺の事、好きにならなくてもいいから・・・」
「・・・え・・・?」
「好きにならなくてもいい・・・でも、友達じゃなくなるのは・・・嫌なんだ・・・お前を失いたくない・・・だから、せめて友達でいさせてくれ」
「・・・セツ」
ぎゅっと後ろから抱きしめられる。セツの体温を背中で、体中で感じた。
(・・・あったか)
その温度に俺はホッと安心していた。襲われているという状況でこんな事をされて、恐怖を覚えてもおかしくないはずなのに・・・ひどく安心していた。
(どうして)
自分の心に戸惑いつつも、体の震えはもう止まっていて、それがなんとなく答えなような気がした。
「・・・セツ、」
俺は枕から顔を上げ、後ろにいる男の頭を優しく撫でた。セツは顔を上げず俺の肩に額を置いたままだ。
「セツ、お前なら・・・わかってんだろ・・・俺が“嫌い”って言える相手は・・・本当に好きな奴相手にだけだってさ」
「!!」
特に仲良くもない相手に嫌いとは言わないし、本当に嫌いな奴には関わろうともしない。それが俺だ。だから、こうやって真正面から嫌いだといえるって事は・・・それなりに好きだって証拠なのだ。
「わかれ、ばか・・・」
恥ずかしさや照れ臭さをごまかすように奴の頭をくしゃくしゃと撫でてやる。
「・・・ゆうた」
セツが顔を上げた。だから元気出せ、と言いかけて俺は固まる。後ろにあるセツの顔は思ったよりも元気そうで、というか全く落ち込んだ様子が見受けられなかった。いつも通りの王子様スマイルで俺を見つめてくる。
「だよなー、やっぱそうだよな、ゆうたが俺を嫌うとかありえねえし」
「ちょ、ま、待てお前!セツ!今の落ち込んでた流れ・・・演技だったのかよ!?」
「嘘は言ってないから演技じゃない」
「もうっお前ほんとに・・・ひやあっ」
指の動きが再開された。ついでに前も弄られて、中途半端に刺激が与えられていく。
「やっあ、む、胸とか、さわんな!俺は男だ!ああっ」
「男でも気持ちよくなるんだぜ?」
「しらん!俺はっ、ハう、ああっ?!」
胸を弄るのに飽きたのか、俺の反応がよくないのを感じて撤退したのかわからないが、セツの手が下の方に移動していった。そして、俺の自身を握り込められる。
「仕方ねー、初めてだしな、男として気持ちよくしてやるよ」
「は?あ、ああっそこ、」
そういうが早いか、セツは俺のをぱくりと咥えてしまった。風呂にも入ってないのによくやれるなと、ひっそりと感心する。
「ん!う、はあっはあ、」
やはり何度も使っているから、前の刺激はすぐに快感へと繋がった。腰が揺れかけるのを必死に抑える。
「ゆうた、我慢するな、出せばいい」
「いやっだって・・・!口、もう、いいから!」
促すように、強めに吸われる。他人に口でしてもらうのなんて初めてで、俺はみっともなくもあっという間に限界まで登りつめてしまった。
「で、でちゃう、から!セツっ」
「んんー」
俺の抗議などどこ吹く風。セツは激しく追い立ててくる。
「あっ、や、だ・・・あ、ハア、いく、う、あっ・・・あああーっっ!」
「ーっ!!・・ぐ、ん・・・っく、・・・ん」
とうとう達してしまい、友達であるはずのセツの口に腰を打ちつけた。セツは顔を一瞬しかめたが、すぐに目を瞑り何度かに分けて俺の吐き出したものを嚥下していく。
「ごくっ・・・ゴク・・・ぷはっ、まっじー」
「ハア、ハア・・・」
俺は脱力しベッドに寄りかかりながら、口元を白く汚すセツを見た。
「お前・・・飲むとか・・・」
「なんでゆうたが萎えてんだよ」
ぺろりと指や頬についた液体を舐めとっていくセツ。
「だってありえねえだろ・・・恋人ならまだしも・・・友達のなんか飲むか・・・」
「じゃあ恋人になるか?」
「それは無理」
セツと恋人繋ぎで街でデートとか、遊園地をラブラブしながら回る・・・とか、絶対想像できないし実現させたくない。
「冷てえなー」
といいつつセツもそういう形を求めてるようじゃないらしい。俺と同じぐらいありえない、という顔をしていた。
「じゃ、いい具合に体もほぐれた所で、俺も使わせてもらおうかね」
「は?」
今まで脱ごうとしなかったセツが、自らの服にも手を伸ばした。俺は思考が止まったまま、セツの指を眺める。
「セツも・・・って、俺も口でしろってこと・・・?」
「それでもいいけど俺はゆうたの後ろでイきたい」
「・・・・・・」
すみません。もう一度言ってもらえませんか。
「だから、俺は、お前の後ろで」
「わー!わー!聞こえない!」
耳を塞ごうとするが、右手は未だに手錠でベッドの柱と繋がってるので上手く扱えない。ていうか右手いつになったら解放してくれるんだ!
「断固拒否!無理!裂ける!」
「裂けない、なんのために解したと思ってんだ」
「うるさい!お前はそこのダンボール箱に入ってる道具で処理しろ!」
「・・・へえ、そんな事言うわけ。自分は思いっきり俺に気持ちよくさせてもらっといてそーゆー事言っちゃうわけね、へえー?」
「!!うぐぐ・・・」
「お前の方がよっぽど扱いが酷くね?友達の」
「はうっ!!」
セツの言葉にクリティカルダメージを受ける俺。
「で、でもさ・・・俺だって、男だし・・・俺がいれる方じゃだめなわけ?そうすればほら、一応抱き合うと言う形はとれるんだしさ」
「お前、俺に入れたら萎えそうじゃん」
返す言葉も無かった。俺がセツを抱くとか、100万つまれても無理だろう。セツは微笑みを浮かべつつ、俺の横に手をついてきた。
「大丈夫だって、ここまでやれたら最後までいけるから」
「何が大丈夫なんだ・・・男としては終わるだろ・・・」
項垂れていると、うなじにセツの熱い唇が触れてくる。
「終わらねえよ、逆にゆうたが男じゃなくなったら、愛せる自信がないわ」
「お前・・・歪み過ぎだろ・・・」
一体俺のどこがどう好きなのか、さっぱりわかりません。
「はは。歪ませてるのはお前だからな?」
ちゅっと首筋に吸い付かれる。
「んっ・・・セツ、」
「うつ伏せになれ・・・多分その方が楽」
「ん・・・」
俺は言われたようにうつ伏せになり、でもやっぱり不安なので頭だけ後ろを向けた。汗ばんだセツが俺を見下ろしてくる。セツは上着のボタンが外され、ズボンの前は寛げられていた。あまりセツは着崩さないタイプなので肌が見えるだけで印象が変わる。
(・・・格好いいな、やっぱ)
改めてセツを「男」として感じた。
「ゆうた」
その熱い視線とぶつかると、ドキっと胸が高鳴った。
「セツ・・・っ」
俺の後ろに移動してくる。
「・・・いれるぞ」
「!」
散々弄られた上に、達した後という事もあってか、穴は大分緩まっていた。
―――ズブッ!
でもやっぱりきつかった。
「うああああっ!!」
背中をそらし、衝撃に声をあげる。後ろで俺の背中を抱いていたセツが低く唸った。
「っつあー・・・きつ、すぎ・・・」
「ハア、あああっ、いっ、はっ」
圧迫感から、呼吸が上手くできない。
「ゆうた・・・大丈夫だ、息、吐け」
「う、あ、っくう、はー・・・」
ゆっくりと息を整え、死にそうな圧迫感からなんとか脱しようとする。それを手伝うように、セツの手が俺の前に移動してきた。達した後で敏感になってる自身を弄られ、俺の体に快感という甘さが溢れてくる。
「よし、いい子だ・・・」
セツが掠れた声で俺を褒めた。その声があまりにも優しくて、涙が滲みそうになる。
「ああっ・・・ん、んっ・・・セツ・・・お前、うごかな、いのか?・・・ハアッはあ」
「お前が落ち着くまで待つ」
「んなこといったら・・・あ、はあっ」
俺の中ではち切れそうになっているセツの自身から、ありありと伝わってくる。限界だ。動きたい。出したい・・・そう、叫ぶセツの欲望が。もしも俺がこの状態になってたら、きっと我も忘れて腰を動かしていただろう。なのにセツは俺が落ち着くまで待つといってくれている。
(そうか・・・セツは、俺を、好きなんだ)
自分の、気が狂いそうな衝動を抑えこんで、俺を気遣えるぐらい・・・好きなのだ。
体を通して、やっとセツの気持ちを理解できた。
(大事にしてくれてるのは、変わらないんだな・・・セツ)
「せ、つ」
「あ?」
俺の呼びかけに、短く答えるセツ。その声はやはり切羽詰っている。
「・・・」
「ゆうた?」
「・・・け」
「あ、何?」
耳を寄せてくる。セツの香水がふわりと鼻先を掠った。
「動け、ばかセツっ・・・もう、俺、は、いいから・・・」
「!」
「早く・・・動いて」
角度的に上目遣いになる形でセツを見つめる。
「ーっ」
その瞬間、俺の中にあるセツの自身がびくりと震え、一回り大きくなった気がした。
「っくそ・・・!ゆうた、ほんとに処女かよ・・・!」
悔しそうに呟きつつ、セツは動き出した。今までの静寂が嘘みたいに、ぐちゃぐちゃとイヤらしい音を響かせて中をかき回される。もちろん、俺の前も手で高められていった。
「あああっ!あ!せ、ツ!はあっうあ、あっ」
「このっ・・・天然タラシが・・・あの野郎にそんな顔したら、許さねえぞ・・・!!」
「ああっし、しない!うっ!んあ!しない、からあ!」
だからもう少しゆっくり動いてくれ。そんな俺の願いも虚しく、どんどん激しくなっていくセツの腰使い。それに俺は早くも根をあげていた。
「はあっ、も、むりっああっ」
「これぐらいでへばるな・・・男だろ」
「かんけーなっ、んあああっー!」
俺はもうされるがままとなり、ベッドに倒れこんだ。それを許さないセツが俺の腰を持ち上げ、ガツンと強めに突き上げてくる。瞼の裏にチカチカと星が舞った。
「んっあああ!やっあ、セツっセツ・・・!」
「ハア、ハア、ゆうたっ」
掠れ声で名前を呼ばれ、荒い吐息がうなじを舐めた。抉られながら、セツの熱い体温を体の中で感じる。
(やば、い・・・気持ちいい・・・)
頭の中を掻き混ぜられているかのような錯覚に陥るほどの快感に、俺は溺れそうになった。
「せ、つ・・・あううっ、お、れ・・・ハアっもうっほんと!」
「ああ、俺も、そろそろ限界だ・・・っ」
限界だというが、セツの腰の動きはまだまだ激しくなる一方で、俺は目が回りそうになる。そして、セツはおもむろに俺の肩を掴み、体を反転させた。うつ伏せから一転し、セツと向かい合うような形になる。真正面からセツと目が合った。汗で色気の増したセツが、熱い瞳で俺を見下ろしてる。
「ーっ!!」
この体勢はヤバイ。まるで本物の恋人同士みたいに、セツと心の底から愛し合ってるかのような気分になる。
「やっあ、セツ・・・!」
俺が元の姿勢に戻ろうとすると、肩をベッドに押し付けられ身動きが取れなくされた。
「こっち向け、ゆうた」
「やめろっセツ!俺、これヤバイ・・・!なんか、いやだ!」
「だめだ・・・ゆうたの、イク時の顔が見たい」
切羽詰った低い声で告げられる。その声は嘘みたいに俺の中にしみこんで、動けなくさせた。
「ゆうた・・・」
名前を囁き、すぐに唇を重ねてくる。互いの吐息を感じながら、噛み付くようにキスをした。腰の動きは止まっていないため、揺れながらのキスだった。
「んんーっ・・・ん、う・・・んむ、んっ」
俺もいつの間にかセツの首に腕を回し、自ら縋りついている。もう、頭は回っていなかった。何も考えられない。目の前の男と、溶け合いたいという衝動だけが俺を満たしていた。
「セツっ、俺、いっ、いくっもういっちゃう、から!ハア、あ・・・ああん!」
「・・・ああっ好きなだけイけ」
腰を引き、そして、勢いをつけてゴリッと一番奥を抉られる。
「!!あっいくっんんあ・・・あああーーーっ!!」
俺の前から、二度目とは思えない量の液体が溢れた。その瞬間、中を締め付けてしまったのだろう。上空から低く唸る声が聞こえた。
「っく、っハア・・・うっ、ハア、はあ」
―――ドクッどぷっ
「あーっ?!あ、、はあ、中、アツ・・・いっ!」
腹の中が一気に熱くなる。じわりと熱が広がり、俺の中を塗り替えていくようだった。
「ま、さか・・・お前、ハア、ハア・・・セツっ・・・このやろ、アあっ!」
ビクッビクッと震えながら、俺の中に全てを吐き出していくセツ。
「はあ・・・はは、わりー中で出しちゃったわ」
「ハアっ、はあっ、ハア・・・さい、あく・・・だよ、お前・・・」
未だに吐き出し続けるセツの自身に殺意さえ覚えた。しかも、より奥に吐き出したいのか腰を揺らしながら出すのだ。マジで勘弁してくれ。
「ハア、はあ、中出しとか・・・も、ほんと・・・」
「男だから大丈夫だろ」
「なっ・・・おまえ、なあ・・・」
俺は達してすぐの倦怠感のせいで、ベッドに倒れこんだまま動けなかった。セツも、俺の上に倒れこみ息を整えてる。セツの汗ばんだ体と密着してるせいで、ありえないぐらい熱くなってきた。
「ハア、ハア、あーもー・・・あつい!うっとうしい!どけ、セツ!」
「はあー?行為後にどけはねえだろ・・・色気ねえなあ」
「いーっから抜けっ!あと未練ったらしく腰ふんな!もうはいんねえんだよ!猿かお前は!」
「誰が猿だ!・・・っち」
セツは舌打ちをしながら一度強めに突きいれ、それから名残惜しそうに腰を引き、俺の中から出て行った。
「やってる時はあんなに可愛かったのによー」
「知るかっ、ーっあ?!」
セツが抜けるとすぐに、中に出された液体がドロリとこぼれてきた。擬似排出の感覚に、背中がゾワリと震える。
「はうっ!?」
「おーいい眺め・・・携帯、携帯はどこだ」
「おい、写真撮ったら絶交だからな」
「なっ?!・・・ぐうっ・・・この景色をとるか、友達という立場をとるか・・・くそっ俺はどうしたらっ!!」
いや、そこで悩むなよ。やっとお前の俺への愛が理解できたと思ったのに、そんなことで揺らぐんかい。
(はあ・・・やっぱセツはセツだな・・・)
くたりとベッドに倒れこむ。セツに背を向け、壁の方を向いたまま目を瞑った。すると、一気に疲れがでたのか、どんどん意識が薄れていく。
(やば、ねむ・・・)
セツは暇なのか、俺の後ろ髪をツンツンと引っ張ってくる。
(・・・起こすなよ、ばか)
こちとらお前のせいでくたくたなんだから。
「なあ、ゆうた」
「・・・何」
「俺たち、友達だよな」
「・・・」
少しの間のあと、俺は口を開いた。
「たぶん?」
「えっ・・・おい、ゆうた!」
セツの焦った声を聞けて満足した俺は、眠りの世界へとゆっくり落ちていく。
学ランを着たセツが立っている。
中学生の頃のセツだ。
『おーいセツ!』
呼びかけると、一瞬、ほんの一瞬だけ顔を輝かせて、それからすぐにまたすまし顔に戻ってしまう・・・そんな懐かしいセツがいた。その頬には絆創膏がいくつも張られている。
『あのさ、セツ・・・なんで助けてくれたんだ?』
『・・・友達、だからな』
『そっか』
気恥ずかしくてお互い黙り込む。
『・・・なあ、ゆうた』
『ん?』
『友達って、一生一緒にいてもいいって事だよな』
『んー突き詰めて考えればそうなのかな、ずっとべったりは鬱陶しいけど』
『だな、べったりは俺も嫌だ』
そういってセツは笑い、
―――でも、だったら俺は友達でいいや。
嬉しそうに呟くのだった。
end
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