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第44話
残りのクレープをLI◯Eの使い方を教えてながら分け合って食べた。
長谷の唇にチョコソース…
「長谷、唇の周りにチョコ付いてる。」
「…えっ、嘘…」
カバンからタオルハンカチを出して「…申し訳ない…から…」と遠慮する長谷を無視して唇を拭いてあげた。
申し訳ないのは俺の方だ。
なぜなら、このタオルハンカチはきっと今夜俺の良いオカズになるだろうから。
(ブサイク男子の唇を拭いたタオルがオカズになる日が来るとは…)
人生何が起こるか分からないものだ。
いきなり目の前に現れたブサイク男子にキュンキュンする日が来るなんて思いもしなかった。
(まぁ、俺が知らなかっただけだから、いきなりじゃないけど…)
物珍しい人間に一時的に惹かれてるだけなのかもしれない。
でも、もしこれが一目惚れというものならこうして突っ走るのも有りだと思う。
「はーせ?」
カメラモードのスマホを構えてから長谷の肩を叩いた。
こっちを向いたところでシャッターを押す。
「…あ…」
「ツーショいただきっ!」
「…しゃ、写真…ダメって…言った…のに…」
「ん?そうだったっけか?」
「…言っ…た…」
「いいじゃん。長谷にも送ってあげるから。」
「…だ…だめ…け、消して…」
「なんで?」
「…ぼ、僕の写真…なんて…ふ、不愉快に…」
「ならない!だから消さない!!」
「…な、なる!なるよ!!なるもん、絶対に不愉快になる!!」
(お。いいねぇ。ムキになりすぎてオドオドしないモードの長谷さん。)
これはきっと、長谷にとって良い傾向なんだろう。
怒りでも喜びでも、どんな感情だったとしても、気持ちをぶつけるのは大切な事だ。
普通の人が、普通に出来る事…
それが長谷にとって難しい事なら、せめて俺の前でだけでも、たまにでいいからさらけ出せばいい。
そうやって萎縮しきってしまった心を取り戻していったらいい。
ぶつけてくれるなら、取り戻せるまで俺が付き合う。
自分に酔ってるわけじゃない。
本気でそう思った。
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