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第55話
なんかもう、こう純粋なものに触れているといかに自分が黒いか実感してしまう。
「だっでぇ…ふ…えぇ…」
「だから泣くなって!なんか話したこっちが恥ずかしくなるだろ。」
「ず、ずびばぜん~」
「く…くくッ…何語だよ、それ。」
「笑うなんて酷いですよ!もー…うぅ…」
「まぁ、小林君は自分の事頑張れよ。俺は俺で…って頑張りようもないけどな。」
「いえ、そこは頑張りましょ?俺、応援しますからー!」
「応援って…」
「応援します!」
「あー分かった分かった。とりあえず折れないようにだけ頑張る。」
小林君はグシグシ涙を拭いて笑った。
その後、小林君と別れて家に戻った。
起きて、働いて、家に戻って、チョコちゃんとひとしきり遊んで、ご飯食べて、寝る…
これが俺の日常だ。
こうやって紘二を待ってきた。
いい加減、心が折れかけていた。
でも、小林君に話して少しスッキリした。
もう少しだけ、頑張ろうと…
頑張ってみようと…そう決心した。
ーーーーー
数ヶ月が経った。
特に変わった事はない。
世の中はクリスマスも正月も終わった。
振り返れば、クリスマスはレストランだった時と同様忙しかった。
でも、その分正月はゆっくり休めたと思う。
いくら長期休みがあるからって、特に俺には特別な事はない。
帰る実家もないし、遊ぶ友だちも居ない。
当然、恋人も…
ついこないだまでそんな事を考えながら少しナーバスになっていたが、そんな事も考えていられない程忙しくなるあの時期がやってきた。
女子が浮かれ、その浮かれ具合に男子が翻弄されるあの時期だ。
バレンタインデー…
小林君にスイーツ男子の話をして誤魔化したツケがここで返ってくるとは思わなかった。
今年は女子だけじゃなく、男子もターゲットに入れた新しいスイーツを出す事になってしまった。
おかげで毎日大忙しだ。
けど、忙しいのは助かる。
余計な事を考える暇がない。
だから助かる。
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