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プロローグ

*  見慣れた天井。俺の家。  いつもと変わらない家の玄関には、聞きなれない卑劣な音と、耳を塞ぎたくなる様な卑猥な声が響いていた。  ぱちんっぱちんっと肌がぶつかり合う音。グチュッ、ヌチュッとやらしい水音が結合部から漏れている。  耳から肌から。  揺さぶられる体から今起きてる事は現実なんだと嫌でも教えこまれる。 「やっ! う、嘘……ダメっ、あああっ」 「祥の初めて、俺がもらっちゃったね」 「離せぇッ! ダメっ……動、くな……やだ!」 「ビクビクしてる。 気持ちいんだ? 奥がいい? それとも入口のが今はイイか?」  信じたくないと閉じた瞼の奥に、よく知る男の笑顔が浮かんでは消えてゆく。  嗚呼、冗談だと言ってくれ……。  すべて嘘だと。悪い、夢だと。 「祥ちゃん、いまお前を抱いてるのは」  ──俺だよ、忘れんな。  鼓膜に響くハスキーな声が微かに上擦る。  官能を伴う甘い吐息と共に囁かれた言葉と共に体内で何か熱いものが弾けた。  俺──小日向 祥(コヒナタ ショウ)は14年間幼馴染みをしてきた男に、貞操奪われました。 「ああっ……! 嘘、だろ……なか……でて、る」 「種付けしちゃった、ごめんねしょーちゃん?」  意地悪で、何を考えてるかわからないやつ……。  女の子を取っ替え引っ替えしては遊び回ってる股間のユルユルな幼馴染みに。  けれど、いつだって、俺の隣で穏やかに笑ってくれていた筈なのに。 「なっ、んで。こんな事……」 「んー、なんとなくかなぁ」  鼻で笑い、恍惚な笑みを浮かべる幼馴染みを見てゾッとした。  俺を抱いて、幼馴染みだった俺を抱いて、どうしてそんな笑っていられるんだ。  幼馴染みの気まぐれで、退屈しのぎで、俺は女のように抱かれているのだとしたら── 「なんとなく? ふざけんな。ふざけるなよ! お前なんか、大嫌いだっ!」 「へぇ。残念だなぁ。でもね、俺は気に入ったよ」  ──お前はこれから俺の玩具に決まり。 「宜しくね、ペット」 「……っ、」  俺は、今日大切な幼馴染みを失った。  代わりに手に入れたのは、あいつの愛玩具と言う名の都合のいい慰み者だ。  最後に見た微笑みは、俺達の14年間を嗤うかのように消えていった。

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