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始まり

昔から良く女に間違えられる事が多かった。背もそこそこあるし、女と並べばやっぱり体格だって違うのに。 それでも昔から「女の子みたい」、「綺麗だね」なんてそう言われて来た俺は自分の顔も体もコンプレックスだった。 そして何よりも嫌なことは幾度となく男に襲われた事で、決定的に違うのが「男だから、何しても大丈夫だよね」なんてここで突きつけられる性別。 なにが大丈夫何だろうか……襲われる事に何の違いがあるのか。 痛む心はいつの間にか慣れに変わり、麻痺していた。 初めて襲われたのは中学1年の時。 学校の先輩達に空き教室に連れ込まれたときだった。 それをきっかけに、思春期を迎える頃にはもう何度も数え切れないほど男から色恋の目で見られては襲われた。 だけど幸いにも幼稚園の頃から空手を習っていたお陰で今迄一度も貞操を奪われること無く逆に襲ってきた男達をしばきあげては何とか自分で掻い潜って逃げて。 襲われる度に返り討ちにしていたからか、いつの間にか直接的に手を出してくる男は自然と減り高校に上がる頃には少しずつ落ち着きを取り返していた。 なのに、 それなのに……。 つい昨日守ってきた貞操を奪われてしまった。それも友達に。14年越しの幼馴染みにだ。こんなこと、どう受け止めればいいんだ……。 「……嘘だったらいいのに」 昨日あのまま幼馴染みに犯された俺は意識を手放し目覚ましが鳴るまでぐっすりと眠ってしまったらしい。 昨日の事が全て嘘だったらいいのに……。何度も願うようにして布団から起き上がるが腰が激しく痛み悶える。 ズキンズキンと腰に広がる鈍痛に、手首に残る赤い跡。 嫌でも昨日の事が事実だったと俺に教えてくれる。 「……、あー、休みたい」 あまりのショックに学校に行くのが億劫だ。 だけど俺の家は少し訳ありで広い一軒屋に弟とほぼ二人暮らしをしているから、理由もなく休むことに抵抗がある。 母親は居らず父親がいるけど、その父親も血の繋がりがない。 俺達の本当の両親は俺が幼い頃に交通事故で亡くなっている。 でも、そんな俺達兄弟を引き取ってくれたのが今俺達の父さんである享(トオル)さんだ。 享さんは外資系の企業に努めているためなかなか家に戻ることがない。短期の単身赴任だったり出張だっとりと家を開けることが多いから。 だからあまり甘えたくないのが本音で。 弟も俺も出来ることは自分達でやろうと決めていたからか、休みたくてたまらないが渋々ベットから降りるとリビングへと向かった。しっかりしなくちゃならないと言い聞かせてきた性分はこんな時でも癖づいてるみたい。 リビングに降りると今年高校生になった自慢の弟が毎朝俺の為に部活で早く家を出る前、朝ご飯とお弁当を作っていてくれる。 綺麗に飾り付けられ、ラップをされた美味しそうな料理を見ると自然と笑みが溢れた。 「ふふっ、今日も美味しそう」 可愛い弟の笑顔を思い浮かべながらその朝食を有り難く頂くことにした。 暫くテレビでニュースを眺めると時計を確認して私服に着替え、学校で使う道具と教科書を持つと家を出る。 俺が通う学校は美容の専門高校で、名の通り美容系に進む人達が通う学校だ。 専門も高校も兼ね備えてある校舎のため、たくさんの人達がいる。 もちろん俺と同じく高校から通う人もいれば、高校は普通の学校に通い専門でこっちに来る先輩達もいえ。 俺は現在、美容高校に通いながら都内の美容室で雑用と言う名のアルバイトをしていた。 高校は私服登校でも制服登校でも好きな方でいいのは楽で助かる。着替える面倒もないし、俺はバイトもある日は必ず私服で登校していた。 「……はぁ」 家を出るとジメジメとした雨空。心もどんよりしているのにこの天気でもっと気分が落ちる。ため息一つこぼし、バイクに跨ると鬱な気分を吹き飛ばす様に風を切り学校へと向かった。

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