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星空の下で
瑞生さんにあちこちにキスをされては軽い痛みが体中を駆け巡り腰が疼く
その優しい啄むキスに心がぎゅーっと何度も締め付けられて仕方ない。
「……祥……好き…ずっと好きだった」
「んぅっ……はぁっ……ふぅ……瑞生さん…」
「祥の体…俺の跡で沢山になっちゃったや」
「……んっ…ああっ!…み、ずき…さんっ…そこは!」
瑞生さんは赤く散らばった沢山の鬱血跡を指で一つ一つなぞると、布一枚纏うことなく裸の俺の中心にそそり立って居るモノに触れた
「…祥、気持ち?」
「んぅ…き、もちぃ…です」
「ふふっとろとろ…よかった」
「ああっん!やっ!だめっ…う、しろ…」
瑞生さんは俺の淫液を掬いあげるとアナルのしわ一つ一つ伸ばして染み込ませるかのようにして濡らしては指を中に入れる
久しぶりの異物感に体はぞくぞくと震えあがり嫌でも自分の体が快楽に素直なのがわかる
「祥、苦しくない?」
「んっ…あ、はいっ…大、丈夫っ」
瑞生さんはそう言うとグチュグチュと音を立てて本格的に俺の中を解し出した
体がどんどん熱くなり快楽を求めだす
腰が勝手に動いては前立腺を押しつぶされる度に口からは甘い声が上がる
視界には余裕がなさそうに熱く俺を見つめてくる優しい顔をした瑞生さんがいて
その口からは何度も何度も俺の名前と「好きだ」と甘い囁きを翻している
なのにこれだけ目の前で愛を感じてるのに心が暖かくならない
瑞生さんの指を肌を体温を感じる度体は熱くなるのに心は冷えていく
――ああ、俺直輝じゃなきゃ駄目なんだ
そう思ったとき、
「………祥辞めよう」
「え?」
「………祥が苦しそうな顔見たくない」
「み、ずき…さん…?」
そう言って俺から指を抜き、瑞生さんは強く強く俺を抱きしめた
「……祥が…まだ誰かを好きじゃないなら…奪いたかった…でももう遅かったみたい」
「……瑞生さん…」
「…ごめんね、俺は先輩も男としても失格だね」
「そっそんなことないです!瑞生さんはいつだって恰好いいです…優しい…」
「………祥…ありがとう…怖かったよね、服着れる?」
「………………はい」
そう言って瑞生さんの手から服を貰い、ベットの上で下着を履いてズボンを履きベルトをした時、瑞生さんの玄関の扉が勢い良く開き誰かが中に入ってきた
「祥!!!!」
力強い切羽詰ったその声は紛れもなくこの一週間求めていた人の声で俺は驚き動きを止めてしまう
直輝は何度も俺の名前を呼びながら部屋の扉を開けると、上半裸の俺と煙草を吸っているいつもの飄々とした顔の瑞生さんがベットの上に居るのを見て鬼の形相をして殴りかかってきた
「お前っ!祥に何した!」
「やめろ!直輝!!」
俺は黙って目を瞑り殴られる事に反抗を示さない瑞生さんを庇うようにして慌てて直輝の前に立つ
「退け、祥」
「やめろって直輝!」
「………は?なに、もしかしてそう言う事?」
「え?」
「……そいつの所に行ったわけ、じゃあ俺は邪魔者って事かよ」
直輝は冷たく俺を見下ろし握り締めた拳を下ろすと舌打ちをして部屋を出ていく
俺は直輝が何を言っているのか分からず呆然としていると瑞生さんが俺の背中を押した
「………祥、追いかけなきゃ」
「え?」
「…彼に伝えたい事があるんだろ?」
「ッ!!」
「ほら、行っておいで」
瑞生さんはそう言うと俺の髪をくしゃくしゃと撫であげ最後に一度ギュッと抱きしめ背中を押してくれた
俺は優しく微笑んでいる瑞生さんに頭を下げると直輝の後を追うために部屋を飛び出した
(直輝っ…どこ…!)
辺りはもうすっかり黒闇に包まれていて一体どっちに直輝が歩いていったのかがわからない
でもとにかく走り出して道を進むと住宅街を抜けて河川敷に出た
その遠く真ん中辺りに白髪をなびかせて歩く背中が見える
お酒で未だ動きづらい体に鞭をうち必死にその後ろを追いかけた
「直輝!!」
「……」
「直輝っ!待って!」
「…………」
俺の声が聞こえないのか直輝はスタスタと歩いて行ってしまう
俺は必死に走ってるのに埋まらないこの距離が怖くて堪らない。早く伝えなきゃならないのに
「…っ直輝!」
「……」
とうとう走るのを辞めて一人真っ直ぐ夜の空に吸い込まれるようにして消えていく直輝の後ろ姿を見つめた
「置いてくなよ馬鹿!」
「……」
「俺を…置いてくなよ…」
「………」
「直輝まで俺を置いて何処かに行くなよ!」
喉がカラカラで声が出ない
走り出そうとしても足が地面に張り付かれたようにして動かない
前を見てるのが辛くなって足元に視線を落とす
(どうしてお前まで俺の前から消えるんだよ…)
目の奥が熱くなった
まただ、また、喉の奥が締め付けられて
上手く息ができなくなる
息の仕方を忘れたみたいに、
直輝が居なくなると思っただけでこんな情けない姿になる
視界が歪みだし目に涙が溜まる
だけど涙を零したくなくて必死に唇を噛み締めて、再び追いかけようと前を向いたとき俺の体が何かに包まれた
トクン トクン と音を立てて動いているのは直輝の生きている証でもある心臓の声で
俺の体を痛いくらいに抱きしめてるのは俺が好きな綺麗な腕で
俺の前に今立っているのは俺が好きな――
「……追いかけてこいよ」
「……無視したのは直輝だろ」
「それでもあの日みたいに俺の元まで来いよ」
「……っ……お前こそ俺を置いて行くなよ」
「………」
「直輝まで…父さんや母さん達みたいに俺の前から消えるな…何処かに行くなよ…」
「………祥」
「……俺を一人にしないで…」
「…うん……っ…ごめん、しない…何処にも行かない」
「ずっと俺の傍に居てよ…」
「…うん……っ…うん…」
直輝が苦しそうな声で俺の頭を胸に押さえつけながら何度も頷く
虫の音が聞こえる
サラサラと横は川が流れていて
辺りはしんっと静寂に包まれている
直輝の心音と体温が染み渡って
溢れ出す気持ちが口を伝い空気に混ざった
「………直輝、好きだよ」
「っ!!!」
ずっと待たせていた答えを口にした
声にした言葉は夜の静寂に溶けて消えていく
――俺は、直輝が好き
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