いつまで経っても八神が舌を捻じ込んでくる気配はない。 激しいキスで身体を熱くさせておいて、焦らすなんて性格が悪すぎる。 八神の熱を持った視線が更に俺を熱くさせる。 そんな目で俺を見るな… 頭がクラクラする… 流されそうな自分が悔しい… いや、俺はもう流されていた。 八神のネクタイを掴んで引くと、その唇に噛みつく。 舌を捩じ込むとそれを待っていたかのように絡め取られた。 「…ん…ッン…ふ…っ…ハァ…」 舌が熱い… なにがなんだか分からなくなる。 唇が離れて、ゆっくり目を開くとまた熱視線とぶつかる。 そして、見せつけるように繋がった唾液を八神が舐め取った。 「…ッ…ハァ………困ったな…。君は本当に、可愛らしいね。」 「…」 八神の言葉が頬を熱くさせた。 おかしくなりそうだ。 「…蹴人、君のその可愛らしい姿をもっと俺に見せて…」 唇が触れるか触れないかの位置で囁かれる。 恥ずかしくなるような台詞に、バカみたいに甘ったるい声… 「ッ…」 視線や甘ったるい声で発せられる言葉… そんなものにほだされる俺はどうかしている。 頭の中になにか沸いたに決まってる。 それが俺をおかしくさせているんだと思う。 八神の首元に両腕を絡ませて唇を啄んだ。 「…いい子………」 その言葉を聞いた瞬間にはもう舌が捩じ込まれて絡め取られていた。 「…っン、ん…」 唇の隙間から声が漏れた。 颯斗が出すような可愛い声なんかじゃない。 分かるのは、欲に満ちた声だという事だけだ。 悔しいが気持ちいい… でも、やられるままというのも悔しい。 リードされている事が悔しい。 負けじと八神の舌を吸い上げる。 細やかな抗議が受け入れられるわけもなく、八神の舌は口内を荒らした。 俺の口内が熱いのか、八神の舌が熱いのか、もうよく分からない。 唾液すらも混ざり合って、俺を混乱させた。 卑猥な水音に聴覚がイカれる。 唇の端からは唾液溢れた。 こんな激しいキスは経験がない。 身体だけの付き合いにキスなんてものは必要なかったからだ。 だからキスの経験が少ない俺には刺激が強い。 「……ンッ…」 「は、…んン…ッ…」 たかがキス一つで下半身が熱くなっていくのを感じた。