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第37話

抗議しようと八神を見ると、あやすようにまた髪を撫でられた。 俺の両頬を包んでリップ音を響かせながら顔中にキスを降らせる。 何度も何度もバカのひとつ覚えみたいに… 「…お前、しつこい。」 「君が、あまりに可愛らしいからだよ…」 「やっぱり、お前の目は腐ってる。………つか、なんで約束を守らなかった。」 「いいわけになってしまうけれど、仕事の都合で急遽出張になってしまってね。」 「断りの一つくらいはできただろ…」 「そうだね、本当に申し訳なく思っているよ…。あんなにも楽しみにしていたのにも関わらず、忙しさにかまけて大切な約束を失念するだなんて…」 バカ正直なヤツ… 適当に誤魔化す事もできた筈だ。 それなのに、忘れてた事を認めた。 八神は嘘がつけないヤツなのかもしれない。 「別に、もういい。理由は分かったし、お前はきちんと謝った。だからこの件は終わりだ。」 「怒っている?…」 「もうこの件は終わりだって言ってるだろ。…少し…寝かせろ…」 一気に疲れがきた。 瞼が落ちてきて視界が狭まった。 ベッドが軋んだと同時に、背中に熱を感じてなにかに包まれた。 それが、妙に馴染んで感じた。 「…蹴人、好きだよ…君を、愛している…」 俺は、薄れていく意識の中でそんな言葉を聞いた気がした。

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