腕の中でモゾモゾと動く気配に目が覚めた。 どれ程の時間が経過したのだろうか。 「…蹴人、起きたのかい？」 「…」 「…いつもよりも口内が熱いのではないかと感じていたのだけれど、熱があっただなんて驚いたよ。」 「マジか…やらかしたか…」 蹴人はとても落ち込んだ様子を見せた。 次には、とても難しそうな表情をし、眉を寄せ背を向けてしまった。 「…蹴人、どうしたのだい？」 「…別に、どうもしない。」 蹴人を後ろからそっと抱き締めた。 そのようにしなければまた離れてしまう予感がしたからだ。 「蹴人、少し話をしようか。」 「…話？別にお前と話す事なんかない。病人にこれ以上喋らすつもりか、…寝かせろ…」 「ごめんね。けれど、少しだけ付き合って。…嫌かい？」 「…少し、だからな。」 俺はそのままゆっくりと口を開いた。 何日も胸に引っかかっていた事… 腕にも自然と力がこもった。 「蹴人、君の様子がおかしかった原因はなんだい？ 「…別に…おかしくない。」 隠しているつもりなのだろうけれど、隠せていない。 とても分かりやすい反応だ。 「蹴人、どうかはぐらかさないで…」 俺の腕の中でその言葉にピクッと反応した。 本当に分かりやすい… 「…ッ………お前のせいだろう！！」 「俺のせい？…」 「全部、お前のせいだろうが！！」 「…」 俺のせいとはどういう事だろうか。 見当がつかない。 「全部、お前が悪い！！バカみたいに甘い声で甘やかしたり、触ったり…毎日電話してきたり、忙しいクセにバイト先に来たり…ホントわけ分からなすぎる。…だから全部、お前が悪いッ！！」 「……困ったね。俺は今、君に怒られているのだろうけれど…なぜだろうね、愛の告白のように聞こえてしまう…」 「ふざけるな…」 どうしたものだろうか… 本当に… 可愛らしい… 「あの日…初めて君をこの部屋に連れてきた日に俺が伝えた言葉を忘れてしまったのかい？」 「俺に…伝えた言葉？…」 その反応から、伝えた筈の言葉が届いていなかった事を理解した。