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第6話
見上げた八神の顔は少し不安げで、今まで自分でいっぱいいっぱいであまり意識した事がなかったが、駄々漏れさせた色気が半端なくて、ホントに参った。
「…お前、綺麗なのな…そういう顔、嫌いじゃない…」
ウエストコートのボタンを外すと、八神が手伝うかのように脱ぎ床に落とした。
いつもの八神なら、それを畳むくらいの余裕を見せるが、今日は違う。
既に興奮しているかのように呼吸が乱れていた。
いかにも高級そうなタイピンを投げると金属音を立てて跳ねた後床を転がった。
ネクタイを緩めようとしたが、乱れを許さないと言うかのように固く結ばれていて、上手くほどけない。
八神は簡単に緩めてるからなにかコツがあるんだと思う。
イライラして、強引にほどくと、出来る筈のない場所にシワを作ったネクタイがハラハラと落ちた。
邪魔だ、邪魔だと身につけていた物を乱雑に扱っているのに、八神は怒らない。
ただ俺の姿を静かに見つめていた。
ようやく辿り着いたワイシャツのボタンを順に外していく。
ホントはこんな邪魔な物、ビリビリに破きたいところだ。
肌が晒された場所から順に唇を這わせる。
首筋舐め上げて、鎖骨に吸い付き、痕を残した。
「…ッんン…君は、…荒々しいのだね…」
久しぶりに誰かを攻める感覚に興奮した俺を宥めるように、八神がぞっと背中を撫でた。
「…なぁ、お前…どこが感じるんだ?…」
八神の胸元にキスを散らしながら言った。
「…ッ…どう…だろうね…」
「…知ってるんだろ?…」
八神の手が俺の頭に回って、引き寄せられた。
「…全て…蹴人が触れた場所は…全て、気持ちがよいよ…」
「…ッ…」
そう静かに耳元で言った八神はかなりタチ悪い…
そもそも、なんでこんな素直に俺に委ねてくるのか…
それが出来ない俺にはサッパリ分からない。
俺はそれを隠すように唇に噛み付いた。
俺に回された腕に力が入って、八神の唇を強引に割って舌を絡ませた。
指の腹で軽く乳首を弄ると、八神の呼吸が上がって熱くなっていくのを感じて唇を離した。
俺と八神を繋いだ唾液の糸を舐め取ったのは、俺だ。
「…ッ…お前、ヤバすぎ…」
「…は、ぁ…蹴人程では…ないよ…」
金属音を響かせながら八神のベルトを緩めると、スラックスのボタン外して、チャックを下ろした。
乳首を吸い上げ、舌先で転がしながら、下着の中に手を突っ込んで軽く握った。
「…お前、もう勃ってる…」
「…ふ…ッ…君に…触れられているから…だよ…」
「…お前…俺の事好きすぎるだろ…」
「いつも…言ってるでしょう…ッんン…君が…好きだと…何度も…ッ…」
俺の脳をバカにする甘い声…
それを、嬉しいとか感じる俺は…
きっともう、完全にバカになっているに違いない。
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