意識を手放してズルズルと崩れ落ちる蹴人を支えた。 俺のモノが抜けたその場所からは、俺が放った白濁が溢れ出ていた。 俺は足の付け根まで下がった下着とズボンを履き直し、皺になったワイシャツを蹴人の肩に掛けて抱き上げ、寝室へ向かった。 蹴人をベッドに下ろし、後処理をした。 俺の指がナカで動く度にその場所は収縮し、蹴人の口元からは切なげな声が漏れた。 その度に俺は心を痛めた。 そして全てが終わるとベッド端に座り、蹴人の頬を撫で、綺麗な色に染まった猫っ毛に指を絡ませ遊ばせた。 まるで求めてくれているかのようにクルクルと指に巻き付く髪の一本一本までもが愛おしく、何度も繰り返した。 このままでは、また変な気を起こしてしまいそうだ。 俺はそのようになってしまう前に蹴人に掛け布団を掛け、頭をそっと撫でてから寝室を出て、その足で洗面所に向かいシャワーを浴びた。 温めのお湯で程よく感情を落ち着けてから、バスローブを纏い寝室に戻った。 「…ん…ッ…」 後ろからモゾモゾとした気配を感じた。 「…蹴人、起きたのかい？」 振り返ると蹴人が目を覚ましていた。 「…あぁ…」 ゆっくりと蹴人に近付きベッド端に座ると、蹴人に手を伸ばし、指先で頬に触れた。 「ごめんね、無理をさせすぎてしまったね…」 「別になんともない。…それに、俺から………」 上手く聞き取れなかった言葉の内容は、言われずとも理解している。 「嬉しかったよ。君から求めてくれた事が、なによりも嬉しかった…」 「仕方ないだろ、久しぶりだったわけだし。…そもそもお前が無駄にベタベタ触るのが悪い。」 「おや？触れてきたのは君の方であったと記憶しているけれど？」 「それは、お前の記憶違いだ。」 思わず笑ってしまった。 俺は、蹴人とのこのような会話がとても楽しい。 折戸とは別の心地よさがある。 「ふふ、ではそういう事にしておこうか。俺が触れるだけで、君があのように求めてくれるのならば、俺はいくらでも君に触れるよ。」 「…バカ。」 俺にとって、今のこの時間は奇跡と言ってもよいだろう。 初めて蹴人を抱いた日は、思いもしていなかった。 セックス後に、このように穏やかな会話が出来るなど… 大きな音が部屋に響いた。 お腹を抱えながら、頬を赤らめる蹴人は可愛らしい。 その音の正体に笑ってしまう。 蹴人は、どこまでも蹴人で… こういったところが… 愛おしくてたまらない。 「とても君らしいね。今日の君はいつもと違っていたように感じていたのでね、少し安心したよ。蹴人、シャワーを浴びておいで。なにかお腹の足しになるものを作っておくよ。」 「…ん、頼む。」 蹴人がベッドから立ち上がった瞬間に崩れた。 俺は間一髪のところで蹴人を支えた。 「大丈夫かい？」 「大丈夫だ。…もう離せ。」 蹴人は素っ気なく言うと俺から離れ寝室を出て行ってしまった。 無理もない。 理解はしているが、あからさまな態度をされると傷付く。 口元から溜息が漏れ、寝室を出てリビングに向かった。 蹴人には食べ物を用意しておくと偉そうに言っておきながらよく考えてみると食材などあるわけがない。 俺は長期出張の為、食材を使い切ってしまっていた。 なるべくならば、蹴人には手作りの料理を食べさせあげたいが、今日は諦めるしかなさそうだ。 キッチンに向かいシンク下の引き出しを開けるとレトルトのカレーとライスを見つけた。 普段レトルトなどを口にする機会のない俺だが、近所のスーパーに買い物に行った時に試食品を進められ、断り切れずに口にしたこのレトルトカレーの美味しさに驚き、一時期好んで口にしていた。 そのレトルトカレーがまだ余っていた。 ライスをレンジで温めている間に沸騰させたお湯にカレーの入った袋を入れて温まるのを待った。