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第16話
お皿にライスを移し、温まったカレーをライスに掛けるとタイミング良く戻ってきた蹴人と目が合った。
「随分とゆっくりだったね。逆上せてないかい?」
「大丈夫だ…」
「お水を飲むかい?」
「あぁ。」
冷蔵庫から水のペットボトルを取り出し、蹴人に渡した。
「ごめんね、作るだなんて言っておいて、食材が何もなくて…出来合いのものになってしまうのだけれど…」
「…なにか口に入ればいいし、気にするな。」
「外食も考えたのだけれど、今の蹴人を外出させるのは気が進まなくてね。…今の君は、誰にも見せたくはない…」
ダイニングチェアに座った事を確認し、カレーを蹴人の前に出した。
「外食も考えたのだけれど、今の蹴人を外出させるのは気が進まなくてね。…今の君は、誰にも見られたくない…」
情事後のせいか、まだ蹴人は色気を纏っていた。
このような蹴人を連れ、外には出られない。
「…なんだそれ。」
「どうぞ、召し上がれ。…俺も食べた事がないのでね、美味しいのかどうかはわからないのだけれど…」
恥ずかしくてレトルトを好んで食べていた事があるなど言える訳がない。
俺は小さな嘘をついて、蹴人の前にスプーンを置いた。
「大丈夫だろ。レトルトなんて大概どれも同じだ。…いただきます。」
俺は蹴人の正面に座り、豪快にカレーを食べる蹴人を見つめた。
「蹴人は本当に美味しそうに食べるね。何度見ても飽きないよ。」
「あんまり見るな。…つか、お前は食わないのか?」
「俺は大丈夫だよ。このような時間に食べてしまうと胃がもたれしてしまいそうだからね。」
「お前は爺さんかっ!」
「酷いなぁ…。蹴人、おかわりはするかい?」
「いや、いい。ごちそうさま。」
「お粗末様でした。」
蹴人の食べ終えた食器を片付けた。
「下げるのくらいやらせろ。」
「いつもはしてくれているでしょう?今日は無理をさせてしまったからね。」
俺が食器を洗っていると蹴人はいつものソファーに座って寛ぎ始めた。
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